ハーバードMBA出身者の「キャリア選択の軸」

アメリカのビジネススクールで非常に驚いたことの一つに、学生の卒業後の仕事の選び方がありました。

多くの同級生は、「やりたい仕事」という文脈はしっかりと持ちつつも、「会社」ではなく「自分の住みたい街」や「ライフスタイル」、さらには「自身の望む生き方を実現できる場所」という軸でキャリアを選択していました。これはまだまだ日本には浸透していない考え方なのではないかと思います。

一方、このような流れはアジア各国に押し寄せています。アジアで働くビジネススクールの卒業生たちと会ったり、人材採用にも関わっていくなかで、日本周辺の人材市場の状況を見る機会がありますが、ここ数年アジアでの人材流動性は高まり続けています。これは現地の人材に限りません。欧米を含め様々な地域から非常に多くの人材がアジアに流れ込んでいます。また、流れ込んでくる人材の特徴としては、従来的なビジネスパーソンに限らず、デザイナーやエンジニア、イノベーションの領域に関わる人材など、多岐にわたっていることです。

上海、香港、天津、バンコク、シンガポール、ジャカルタ、さらにはヨーロッパやアメリカ等、こういった市場をまたいでの人材の流れがあるのです。この流れからは、日本は長らく蚊帳の外でしたが、ここ数年、そういった人材が日本にも流れ込み始めています。その理由は、彼らが「共感できる面白いチャレンジと、そのための場」が少しずつ日本でも出てきているということです。

「魅力的な人材が集まる企業」はどこが違うのか

私の関わっていたベンチャーキャピタルにも、非常に多くの外国人起業家が相談に来ていましたし、その流れは今も続いています。彼らの多くは「当たり前」とされている様々な事象に問いかけを投げかけています。

企業や社会が面白い問いかけをしていくことで、ますます魅力的で多様な人材が集まってくるでしょう。

野々村健一『問いかけが仕事を創る』(KADOKAWA)
野々村健一『問いかけが仕事を創る』(KADOKAWA)

「グローバル人材」という言葉はだいぶ使い古されてきましたが、これを従来の「企業で重宝されていた人材」と対比させて考えるならば、その意味は「自分から働く場所を選べる人」ということになるのではないかと思っています。

仕事や会社から選ばれるのではなく、自分から仕事や働く場を選んでいくというイメージです。会社にこだわらず、好きな仕事、楽しい仕事をしていく。いくつかの言語が使えたり異文化圏で働いたりというのは、その一側面にすぎません。また、日本語だけを使っていても、働く場所を能動的に見つけてグローバル人材として働くことはできます。

一方、日本で暮らす私たちは日本がそういった人材にとっても魅力的な国に映るよう挑戦を続けることも重要だと考えます。そうすることで、私たち自身もさらに面白い問いかけに多様な仲間たちと挑戦していくことができるからです。

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