家賃の金額が「上昇傾向」な理由

先に述べたように、毎月の最大固定支出となる家賃は、月収入の4分の1以下を目安にした方が安全です。その一方で、賃金もあまり上がっていないため、多くの人が問題なく支払える家賃は決して高くないのに、実際には家賃の金額は上昇傾向にあるのです。

その要因としては、建物の建て替えでしょう。昭和40年代に建った木造アパートが老朽化のため建て替えられ、高収益を生む建物に移行しています。空室となるのが怖い家主が、人気物件となることを目指して高スペックの建物を建築しているのです。その結果、安い部屋を探すのが難しくなってしまいました。

『家賃滞納という貧困』(太田垣章子著・ポプラ社刊)

6畳1間の共同便所の物件も、最近ではほとんど見かけません。新築される物件は、オートロック、宅配ボックス、温水洗浄便座、インターネット環境等が完備されているような物件ばかり。そうでないとネット検索にもかからないからです。その結果家賃は高騰し、やむなく身の丈以上の部屋を借りるしかない、という状況になっている可能性もあるのです。

身の丈を超えた家賃は当然ながら、家計を圧迫します。いざ生活を始めれば、「もう少し家賃が安ければ生活は楽なのに」と後悔するようになるでしょう。早い段階で安い部屋に移転できればいいのですが、引っ越しするとなればまた費用がかかりますし、ことはそう簡単にはいきません。そうなると、もはや生活レベルを落とす以外に方法はありませんが、それができなければ、家賃が払えなくなるのも時間の問題なのです。

太田垣章子(おおたがき・あやこ)
章司法書士事務所代表、司法書士
30歳で、専業主婦から乳飲み子を抱えて離婚。シングルマザーとして6年にわたる極貧生活を経て、働きながら司法書士試験に合格。登記以外に家主側の訴訟代理人として、延べ2200件以上の家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託してきた賃貸トラブル解決のパイオニア的存在。
(写真=iStock.com)
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