逮捕から108日目で「異例の保釈」
日産自動車の前会長で、金融商品取引法違反などで逮捕・勾留されてきたカルロス・ゴーン氏が3月6日、保釈された。突然の逮捕から108日。容疑事実を全面的に否認している被告が保釈されるのは「極めて異例だ」と報じられている。
確かに、森友学園問題で逮捕された籠池泰典・前理事長は否認を貫き、保釈までに300日勾留された。ホリエモンこと堀江貴文氏は95日で保釈されたが、検察側は保釈を認めないように裁判所に求める「準抗告」を行った。否認している被告に対しては、裁判で立件できるだけの証拠や証言を揃えるために、長期にわたって勾留する、というのが検察の常套手段になっているのは確かだ。
一方で、長期勾留が「人質司法」だという批判もある。バブル期の経済事件で、逮捕された後も黙秘を続けたために長期にわたって勾留された経済人がかつて語っていたところによると、検察側は何とか罪を認めさせようと必死だったという。
また、当初選んだ元検事の弁護士も、罪を認めた上で、執行猶予をとる方が良いと何度も勧められたと言う。逮捕・起訴したにもかかわらず、法廷で無罪となることを検察は恐れているわけだ。
「日本の司法」への国際的な批判に配慮した
ゴーン氏が保釈されたのは、弁護側が裁判所に提示した「条件」に裁判所が納得したからだ、とされている。海外への渡航禁止や、都内の住居の入り口に防犯カメラを設置してその記録を定期的に提出すること、携帯電話はネットに接続できないものを使用し通話記録も残すこと、パソコンは弁護士事務所にあるネットに接続していないものを使うこと、というのが条件だと報じられている。
だが、多くの元検事の弁護士、いわゆるヤメ検弁護士が異口同音に指摘しているのは、この条件では証拠隠滅は防げない、ということだ。外出先で携帯電話やパソコンを借りれば、第三者と接触するのは簡単だというのである。
確かにそうだろう。ゴーン氏が関係者に接触することを完全に阻止することは、おそらく難しい。
それでも裁判所が保釈を決めたのは、100日を超えたという「相場感」と、人質司法批判への配慮だろう。今回の場合、被告が外国人で、かつ社会的地位の高い経済人だということも判断の背景にはある。大会社のトップが逮捕されて身柄を拘束されるのは日本では、それこそ異例だ。しかも当初の逮捕容疑は有価証券虚偽記載罪だった。これは主として粉飾決算を規定した罪だが、例の東芝の巨額粉飾決算ですら、経営者は誰も逮捕されていない。ちなみに金融庁に有価証券虚偽記載だと認定され課徴金も会社は払わされている。にもかかわらず、ゴーン氏はいきなり逮捕された。そうした日本の司法の対応には当初から国際的に批判の声が上がっていた。