この経験を通じて、根本的な考え方が違うということに気づいたという。
「『人生の目的』が違うんだなと思いました。上の世代は『仕事のために家庭がある』のに対し、私たちは『家庭のために仕事をする』という感覚です。40代より上の人はよく『家族サービス』という言葉を使います。育児や家族への貢献がサービスだと捉えているんです。私たちが当たり前だと思っていることがサービス感覚だとしたら、あなたたちとは常識も幸せの基準も違うんだ、としか言いようがありません」
「努力報酬」という形が完全に崩れた
価値観や考え方がまったく異なるゆとり世代を「宇宙人だ」と揶揄する人もいる。とはいえ、共に仕事をする以上は見て見ぬふりをするわけにはいかない。ゆとり世代の思考に詳しい筑波大学大学院教授・精神科産業医の松崎一葉氏に話を伺った。
「キーワードとして『努力報酬』というものがあります。一生懸命働くと、お金が儲かる、出世する。努力に見合う十分な報酬があれば人はめげません。
高度経済成長の頃はまさにこの状態でした。しかし景気が悪くなってくると、給料は上がらない、出世できない、左遷されたり、リストラされたり。努力報酬という形が完全に崩れました。ゆとり世代の親たちは、そんな特に辛い時期を味わった世代の人が多い。お父さんの背中を通して社会を見ていた彼らが、『頑張ったって結局いいことないじゃん』と思ってしまうのも無理はありません」
努力報酬が崩れたというのであれば、ゆとり世代は仕事に対してどう向き合っているのだろう。
「すぐ帰る、指示したことしかできない、といった行動に頭を悩ませる人が多いようですが、当然です。努力しても無駄と考えているので出世欲もない彼らは、契約した自分の仕事を最小限の労力で合理的にこなす、というまさに欧米の働き方と同じ考え方で動いています。これを悪いと考えることがまさに『価値観の違い』なんです」
そんなゆとり世代と上手に付き合っていくには、どうすればいいのか。
「これはいろいろなところで言われていますが、とにかく褒めること。ただ、やりがちなのが、数字や成果といった『結果』だけを褒めてしまうこと。大事なのは『過程』です。うまくいってもいかなくても、『お前、すごい頑張ってたな』としっかりと見て声をかけてあげることで『頑張ったことをわかってくれる』と、金銭以外の努力報酬が生まれるのです」
これからあっという間にゆとり世代がメインになる時代が来る。彼らを理解し、自分自身も変わっていくことが必要不可欠なのではないだろうか。