新卒で非正規雇用されると正規雇用に登用されるのは難しい

(3)登用に向けた課題

「2017年調査」では、「2015年調査」に回答した女性の変化を追っています。

正規雇用を希望していた非正規雇用の女性の過去を調査してみたところ、約35%が大学から新社会人になる際、非正規雇用だったことが明らかになっています。このことからは、大学の就職活動の結果、非正規として採用された女性が、その後、正規雇用に登用されることが容易ではないことが想像できます。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

「2017年調査」では、正規・非正規雇用を問わず、働く女性の職場環境について尋ねています。「会社は研修を行ってくれるなど能力・スキル向上に力を入れてくれているか」という設問に「当てはまる」(「どちらかというと」+「とても」当てはまる)と回答した女性は、正規雇用の女性で21.8%、非正規雇用の女性と18.5%です。

加えて、「上司は常に、あなたの仕事に対して、よくできた点、うまくできなかった点を丁寧に指導してくれるか」という設問に「当てはまる」(同上)と回答した女性は、正規雇用の女性で23.5%、非正規雇用の女性と17.4%です。

“私は一生非正規”女性が正社員を諦めてしまう背景

この結果から言えるのは、正規・非正規雇用に関係なく、女性従業員は勤務先からの研修機会や上司からの育成を受けられるケースが少なく、とりわけ非正規は正規に比べてその機会がさらに少ないということです。

(1)では、勤務先には正規雇用への登用制度があり、正規雇用への登用を希望しているにもかかわらず、難易度が高くて挑戦できないといった残念な事例を紹介しました。正規雇用に比べると、研修機会や、上司による指導の機会が少なく、組織で働くなかで得られる成長機会が少ないことは、正規雇用への登用を難しくしている要因の1つだと考えます。

また、「2017年調査」では、約4割の非正規雇用の女性が正規雇用への登用を希望していませんでした。正規雇用への登用試験が難しいと諦めている女性たちの声からは、勤務先に対して、正規雇用への登用を希望している意思すら表明していない女性が多いのではないかと感じています。また、勤務先から与えられる成長機会が少ないがゆえに、能力の高い女性が正規雇用されることを半ば断念し、不本意ながらも非正規雇用として働き続けている可能性もあるのではないでしょうか。