「では、安倍総理の代わりは誰がいるの?」
著者の幕蓮氏は、元警察庁職員。震災後の政権の混乱を見ながらメモを書き溜め、10人ほどの官僚たちに取材。1年を費やして書き上げた。
幕蓮氏は「安倍政権がベストと思ってないが『モストベター』。野党やマスコミはいろいろ批判するが、『では、安倍総理の代わりは誰がいるの?』と思う」と語った。霞が関ではマジョリティだろう。
一方で「政権礼賛本のようにも言われるが、現政権に満足しているわけではない」「地道に政権を支える警察官僚たちの姿を描きたかった」。葛藤や理不尽さに耐えつつ、職務を遂行する警察への素直な思いがこもる。
第二次安倍政権は、内閣人事局長に杉田和博氏、内閣情報調査室長の北村滋氏、国際テロ情報収集ユニット初代トップの瀧澤裕昭氏をはじめ、枢要ポストに警察庁出身者がかつてないほど多数、就任している。
幕蓮氏は「彼らは政権維持のため裏方に徹し、うまくやっている」と評価するが、「内閣人事局の権限が強すぎて、官僚が人事に縛られ、ものが言えない空気も蔓延している」「安倍一強が続く中、統計不正はじめ、各省庁で次々と起こる不祥事にふがいなさを覚える」とも指摘する。
「『官僚たちの夏』のような自由闊達な議論が中であるのではなく、目の前のことに忙殺され閉塞感も漂っている」。本書はそんな官僚たちへ「もう1度、気概を持て」というエールも込められている。
幕 蓮
東京大学法学部卒業。警察庁入庁。その後、退職。
東京大学法学部卒業。警察庁入庁。その後、退職。
(撮影=村上庄吾)