「選択肢がもっとあるということが大事」

「親が深夜働いている家庭のお子さんを保育する、という仕事もまたあるわけです」と小池氏(撮影=プレジデントオンライン編集部)

小池氏の説明は続いた。

「飲食店だけではなく、介護、看護などの分野で女性が当然働いておられるわけです。そういった分野は24時間で稼働していますし、親が深夜働いている家庭のお子さんを保育する、という仕事もまたあるわけです」

さらに、仕事か子育てか、専業主婦か働くか、その2択を女性たちが迫られ、数少ない選択肢に身を合わせるようにやってきた状況を変えなくてはならないと、女性と子育てをめぐる状況の問題を小池氏は指摘した。

「保育の社会化を議論する前提として、選択肢がもっとあるということが大事です。特に女性の場合、ライフステージによって選択肢が変わっていきます。だから、夜働きながら子育てしなくてはならない人には、それに応じたサポートをするということです」

小池氏はサラリとこう言ったが、過去、女性の働き方との関わりで深夜保育に関してここまで肯定的に踏み込んだ自治体の首長はいない。

思わず、ここ10年で移り変わった男性都知事の顔が浮かんだ。果たして彼らはこのような判断をしただろうか。

「認可」ではなく「認証保育所」での深夜保育

夜間保育への取り組みは、国も自治体も後手に回ってきた。東京都の新たな施策はそうした状況を変える可能性がある。ただし、懸念もある。今回の施策は、認可保育園ではなく認証保育所での深夜保育を促すものだからだ。

認証保育所は、東京都が独自で運営する制度だ。設置基準を見てみると、0~1歳ひとりあたりの広さは、認可保育園の場合、3.3平方メートルに対し、認証保育所は2.5平方メートルまでの緩和が認められているが、東京都の担当部署によれば、広さに関しては、3.3平方メートルが維持されているという。また、保育士の数は認可保育園では職員全員が保育士資格者であることが条件だが、認証保育所では全職員の6割でよいとされている。

2016(平成28)年、全国の認可外保育施設で起きた7件の死亡事故は、すべて睡眠中の事故だった。深夜保育は子どもたちの就寝時間帯と重なるため、安全確保はより重要だ。認証保育所は認可外保育施設よりは保育士の数は多いが、より安全なのは職員全員が保育士の資格を持っている認可保育園だろう。