家族とのバカンスと、仕事のアポを同列に

自分の都合を言うことで、「きっと角が立つだろうな」と最初はヒヤヒヤしましたが、そこが踏ん張りどころ。我慢して続けているうちに、「あれ? 意外とうまくいくもんだな」とわかってきました。「すみません、その時間はすでに別のお客様がいらっしゃいますので、アポをずらすことができません。3週間後のこの日か、この日ならゆっくり時間が取れるんですが、いかがでしょうか」と、正直に伝えられるようになりました。

MDRTは現在、72カ国・約500社の金融・生保で、高い数値基準をクリアした専門家から成る。横内氏はその日本会の理事だ。

すると、お客様側からのアポを断るこちらの態度を、よしとして信頼してくださるお客様がいることに気づきました。そういう方とは、これまで以上に信頼関係が築けるようになった感じです。「えっ、何とかしてよ」と仰るお客様もいらっしゃるのですが、そういう方に限って急に“アポキャン”したり、後々クレームなどのトラブルがありました。

営業マンにとって時間は命です。自分がやられて嫌なことは、周囲の人にも絶対しないようにする。そういう行為の積み重ねが、よいお客様との信頼に繋がっていく気がします。

アポについて、もう1つ大事なことがあります。それは「自分へのアポ」にも他と優劣をつけないことです。他人との約束は先方に迷惑がかかるので守りますが、自分との約束はなおざりにしがちです。例えば“休肝日”をつくっていたとしても、ついつい「新年会だからいいか」とアルコールに手を出してしまう。

私は、休日はボランティアや家族との約束、趣味の自転車やゴルフの練習、読書、研修レポートの執筆などに時間を費やしていますが、これらを仕事のアポと同列に扱います。プライベートだからといって、優先順位を下げないようにするのです。

心理的なハードルは高いのですが、大切なのは、休日の行事を「自分(家族)へのアポ」と捉える感覚。お客様がそんな休日を指定してきても、「その日は埋まっているので」と、やんわりお断りするように心がけます。「何をするんですか?」とまできいてくるお客様は、まずいません。

アポに優劣をつけない、動かさないことを実践していくと、日々の時間の流れが随分変わりました。