多様な人種と打ち解けるには?
【三宅】実際に戸惑われたことで印象的だったことはありますか?
【青木】はじめてメジャーの春のキャンプに合流したときの話なんですが、選手たちが食事をする場所が、なんとなく人種で分かれていたんですよ。そこにきて自分は日本人なので、どこに座ればいいのかという問題があって。
【三宅】どうされたんですか?
【青木】自分のロッカーに近いテーブルに、誰がいても座るようにしたんです。そして自分から話しかけるようにしましたね。結果的にみんなとすぐに打ち解けられてよかったんですけど。
【三宅】それはすごいですね! そういう積極性は日本人の弱いところです。
【青木】僕もそう思います。もちろん、英語は全然しゃべれなかったので、ジェスチャーを交えながら自分の興味があることとか知りたいことを無理やりにでも話す、という感じでしたけどね。
一応、通訳はいたんです。でも、通訳を介するよりダイレクトに話すほうが相手への伝わり方が全然違うんですよね。あるとき、少し気になって同僚に「通訳を介した会話ってどうなの?」と聞いたことがあるんです。そうしたら「ダイレクトで話すほうが断然いい」と。当時の僕の英語は全然ダメだったはずなのに、「お前はちゃんとコミュニケーションがとれている」と言われて、「そういうものなのかな」と思ったんですね。
もちろん文法などがしっかりしていたほうが間違いなく伝わると思いますけど、まずは自分から話しかけるとか、そういう積極性がコミュニケーションにおいてものすごく大切なんだなというのを感じましたね。
英語を話すには「少し違う自分」を演出する
【三宅】積極的に話しかけようと思ったのは、もともとのご性格ですか? それとも意識的に行ったのですか?
【青木】完全に意識的に行っていました。実はメジャーのなかでも英語がしゃべれない人もけっこういるんです。南米の選手とかで僕の耳で聞いても「あれ? これって英語になっていないよな」とわかることがあったんです。念のため、通訳に「彼はいま英語をしゃべろうとしているけど、あまりしゃべれてないよね」と聞いたら、「全然しゃべれていないです」と。
そんな場面に遭遇して「英語をしゃべれないのは俺だけじゃないんだ」とちょっと安心したのもあるんですが、少なくともその選手は彼なりにしゃべろうとしていたんですね。それを見て「あ、文法や単語が間違っていてもいいから、とにかくしゃべろうとすれば伝わるんだな」ということを改めて理解して、僕もチームメートに積極的に話しかけるようにしました。
【三宅】英語を話すときは少し違う自分になるということも必要なのかもしれないですね。
【青木】僕はまさにそのパターンでした。英語を話しているときは、なんというかちょっと変に胸を張ってしまうんですよ。野球でも日本の選手はデッドボールが当たるとけっこう痛がるんですけど向こうの選手は痛がる振りをしない。もちろん本当は痛いんですけど、弱いところを見せない。それと一緒かなとちょっと思いました。