「自分を主語」にすると「全部自分のせい」になる

そこで試行錯誤を重ねた私たちは、父に相談し、買い取りに伺うのではなく、お客さまにお越しいただくブランド品の買い取り専門店をオープンさせることにしました。

これは私たち三兄弟にとって、まったく新しいチャレンジでした。

店を借りるための家賃は安くはありません。お客さまが来てくれなくて、ブランド品の買い取りを増やすどころか、家賃の負担が大きくのしかかり、経営を圧迫することになるかもしれません。

しかし、失敗を恐れて挑戦しなければ、成功は得られません。

自分たちでやると決めて、そのとおりに実行するわけですから、たとえうまくいかなくても、結果に納得感があるでしょう。もしもこれが、誰かにやれと命じられた仕事で、かつ、面白みが感じられないものであったなら、そもそも一所懸命やろうとは思えず、そこに工夫も見いだせなかったはずです。

もしそれがうまくいかなければ、その原因を、仕事を命じた誰かや、時代や環境のせいにしていたかもしれません。しかしこれは、自分たちでやると決めた仕事。うまくいくか、いかないかは、完全に自分次第です。

「自分を主語にする」ことで、あらゆることが自分のせいになります。つまり自分を主語にすれば、何が起きても周りのせいにはできなくなるのです。このとき私はその事実をはっきり認識しました。結果的に出店は大成功し、そしてこれが、のちのSOUをかたちづくる原点ともなりました。

「元Jリーガー」は世の中にたくさんいる

嵜本 晋輔『戦力外Jリーガー 経営で勝ちにいく 新たな未来を切り拓く「前向きな撤退」の力』(KADOKAWA)

さらに「個性と個性を掛け合わせる」ことの、想像を超える大切さも学びました。

世の中に元Jリーガーは、みなさんが想像している以上にたくさんいます。上場企業の経営者も、おそらく想像以上にいるでしょう。

しかし現在のところ、そのどちらにも当てはまるのは、私だけです。だからこそ、嵜本晋輔=元Jリーガー社長、元Jリーガー社長=嵜本晋輔、というイメージをもってくれる人も少なくないと思います。

これが元Jリーガーだけになると、中田英寿さんも、宮本恒靖さんも、みな元Jリーガーです。すぐに私を連想する人は、私の家族くらいでしょう。

元Jリーガーを上場企業社長に置き換えても同じです。検索サイトでイメージすると、検索窓に「上場企業社長」と入力して検索ボタンを押したとき、私の名前が出てくるのは、何度も何度も「次へ」ボタンを押してからになります。

どちらの世界でも、私より抜きんでている人が、たくさんいるのです。