「売れる」と言葉にしたら現実になった

自分なりに工夫し、いざ、ネットオークションに出品する段階になると、入札はあるのか、いくらくらいで売れるのか。そもそも、関心をもってもらえるのか、などの不安が頭のなかを駆け巡りました。しかしそうした思いは、出品してみると一掃されました。すぐに入札者が現れ、見る見るうちに価格が上がっていったからです。

リユース品でも、インターネットで売れる――。画面内で上書きされていく数字を見つめながら、私はそう確信しました。そしてあらためて、「売れる」と決めたうえで、挑戦してよかった、と思いました。

小さなことではあるけれど、やってみたことが報われるという経験をして、ここで戦えるという自信もつきました。そうなると、仕事への意欲もさらに増すことになります。「売れる」という、願いにも似た思いを言葉にしたことで、それが現実となり、その現実が、周囲の反応という環境を変え、私自身まで変化させたのです。

「売れる」という言葉は、周囲への宣言でもありましたが、何より、私自身との約束でした。「売れる」と将来を決めたからには、その将来を実現するために手を尽くす。私は無意識のうちに、自分との約束を果たそうとしていたのでしょう。

何かを「できる」と決めたら自然と、「では、どうしたらできるようになるか」と考えるようになる。この成功体験は、それ以降の事業を展開するうえで、「言葉が現実をつくる」という思考の重要性を私に教えてくれました。

未経験の三兄弟で「ブランド品の売買」に挑戦

「すべては自分ごと」、これも仕事をしてきた過程で学んだことの一つです。

家電などのリユースの仕事を続けるうち、私は宝飾品やブランド品のリユースにも興味をもつようになりました。話を聞いてみると、2人の兄も同じ関心を抱いていたことがわかり、そこからブランド品の売買を、未経験者の三兄弟で始めてみることにしました。

ブランド品の販売は好調でした。買い取って、出品したらすぐに価格がつきはじめ、それも、家電のリユースでは到達しないような金額にまで膨れ上がります。それでも、売れ残ることはないといえるほどの活況を呈するようになりました。

すると、バランスが崩れます。何のバランスかというと、需給のバランスです。

出品すればするほど売れるのに、売るものが足りないという状況が起こってしまったのです。当時は家電や家具の買い取りのために向かった先で、依頼のあった品物のほかに、手放してもよいブランド品があった場合に買い取りをしていたので、売れれば売れるほど、供給量が不足するという事態に陥ったのです。