2024年に日本は2つの深刻な問題に直面する。ひとつは50歳以上の人口が全人口の5割を超えること、もうひとつは通信分野で旧来の交換網が一斉にIP網に切り替わることだ。野村総研の北俊一氏は「2024年問題に対処するには、5Gによるデジタル変革が解決の鍵となる」という。どういうことなのか――。

※本稿は、野村総合研究所『ITナビゲーター2019年版』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。

2024年には歴史上初めて50歳以上の人口が5割超に

2018年5月、自由民主党政務調査会は「『2024年問題』:人生100年時代を生きる将来世代の未来を見据えて──『選択する社会保障』」と題する政策提言を発表した。その冒頭には次のように書かれている。「わが国は、人生100年時代が到来し、6年後の2024年には歴史上初めて50歳以上の人口が5割を超える国となる。まさに、どの国も経験したことのない事態であり、『2024年問題』とも言える」。(図表1)

通信業界においては、2024年は、2025年ごろに維持限界を迎えるNTT東日本・西日本のPSTN中継・信号交換機をIP網に一斉に切り替える年になる。言い換えると、固定電話網がIP網へ移行するわけで、これに伴い、ISDNの「ディジタル通信モード」が終了する。どの国も経験したことがない、大規模かつミッションクリティカルなオペレーションであり、通信業界の「2024年問題」と言われている。その背景には、レガシーな交換機を保守する要員の維持限界が来るということがある。

この2つの「2024年問題」は、企業の経営資源である「ヒト・モノ・カネ」の中で、「ヒト」の重要性が益々高まることを示している。2018年6月に経済財政諮問会議を経て閣議決定された、いわゆる「骨太方針2018」では、持続的な経済成長の実現に向けて潜在成長率を引き上げるため、「人づくり革命」「生産性革命」に最優先で取り組みながら、働き方改革、新たな外国人材の受け入れなど、あらゆる政策を総動員することが示された。

とりわけ生産性革命の実現においては、「AI(人間で言えば脳に相当)、センサー(人間の目に相当)、IoT(人間の神経系に相当)、ロボット(人間の筋肉に相当)」といった革新的技術の活用が強く打ち出された。わが国の企業はいま、デジタル変革が求められているのだ。