この国のかたちをつくりあげた、有名無名な勇者たち73人の残した轍に、混乱の世を生きる現代人の道標を探す。あなたに似たリーダーは見つかるだろうか。

家康には心沸き立つようなエピソードがあまり多くない。子供の頃の苦労話、合戦での苦闘など、挙がってくるのはマイナスのものばかりが目立つ。ドラマの振幅にかけるせいか、あるいは山岡荘八による全26巻という超決定版があるせいか、作品数は信長、秀吉にくらべて断然少なめである。しかし本当の意味で天下を取ったのは、つまり300年に続く泰平の世を築いたのは、この忍耐の男、家康である。

それには、まずは勝つべき戦いには必ず勝つ。戦い方に面白みなど必要ない。また、勝ち取った天下を安定した組織として平定させることのできる、成熟したリーダーでもあった。前述の決定版が経営者に圧倒的な人気があり、読み継がれている所似だろう。

エンターテインメント作品としては、岡崎藩主時代や反旗を翻した息子にスポットを当てたり、家康影武者説が書かれている。

泰平の世を拓いた男の壮大な大河ドラマ
『徳川家康』山岡荘八・著

“狸親父”と嫌われたイメージを一新し、戦後の復興期に熱狂を呼んだベストセラー。歴史上の人物に経営論を学ぶ走りの一冊でもある。天下人への長き道を、ひたすら耐え忍ぶべし! 今なお色褪せぬ魅力を放つ全26巻。

奇抜な仮説になぜか信憑性が。これもまた家康
『影武者徳川家康』隆慶一郎・著

家康は、関ケ原で暗殺されていた─。堅実な印象の強い家康も、こんなユニークな仮説で捉えると、案外本当かもと思えてくる。

父に反旗を翻した息子が夢見た国家の姿
『家康と権之丞』火坂雅志・著

家康の息子、小笠原権之丞を描く。父親に反旗を翻し、幕府から追放された権之丞は海上国家建設を目指し、小笠原諸島を開拓する。

最新研究を取り入れた家康像
『乾坤の夢』津本陽・著

秀吉死後、長い雌伏期間を経て、いざ勝負の時。最新研究を取り入れた人物描写。

松平から徳川へ。変革を迎えた家康
『若獅子家康』高橋直樹・著

岡崎藩主になったばかりの若き家康にスポットを当てた異色作。

徳川幕府という家康が築いた“家”
『覇王の家』司馬遼太郎・著

日本史上初の泰平の世を築き上げた徳川幕府という“家”の成立から台頭まで。

冷静な距離感。ダイジェスト家康伝
『徳川家康』南條範夫・著

著者の他の作品同様、冷静な距離感で描かれたダイジェスト家康伝。

平明に描かれた少年向け評伝
『徳川家康』松本清張・著

松本清張による、少年向けに平明に描かれた家康評伝。人生には3つの転機がある。

苦難の少年時代を綴った短編
『春暗けれど』滝口康彦・著

『天目山に桜散る』に収録の短編。人質に取られた苦難の少年時代について。

名匠が描く天下人の晩年
『落日』中山義秀・著

『中山義秀全集第三巻』に収録。疑心暗鬼を募らせていく天下人の晩年。

(構成=須藤靖貴 撮影=宇佐見利明)