この国のかたちをつくりあげた、有名無名な勇者たち73人の残した轍に、混乱の世を生きる現代人の道標を探す。あなたに似たリーダーは見つかるだろうか。

死して英雄度の上がった信長と比べると、秀吉は終始一貫して絶大な人気を誇る。成り上がりの代名詞であり、ひたすら陽性で気配りの名人。しかしどこか抜けたところがあり、世継ぎに失敗してしまうなどのエピソードも含め、多くの日本人が秀吉の愛嬌と身近さに魅了されるのだろう。

そこで、秀吉をあえて悪役に据えた『妖説太閤記』『秀吉の枷』などの面白さが際立ってくる。『新書太閤記』『新史閤記』といった正統派の他、のし上がっていく様にスポットを当てるか、天下を取ってからの後半戦に注目するかという絞り込み作品も秀逸。天下取りのきっかけとなった出来事を切り取った『天下を呑んだ男』もいい。どれをとっても秀吉という天下の“人たらし”、その面白さ、奥深さが堪能できる。秀吉本にハズレなしと言われる所以は、リーダーには人間的な魅力が必要不可欠、ということか。

(構成=須藤靖貴 撮影=宇佐見利明)