捜査協力を求めた相手国の邪魔をするとは考えづらい

しかしこの報復説は筋違いで、間違っている。

なぜなら本格的捜査の予審手続きに入ったのは、贈収賄という強い事件性を認識したからだ。司法制度が確立した国であれば、本格的捜査に着手するは当然だ。

フランスの検察当局が東京五輪招致疑惑の捜査に乗り出したのは、遅くとも2016年である。ゴーン氏が逮捕されたのは昨年11月だ。フランスは3年という長い時間をかけて疑惑解明の捜査を続けてきたわけで、ここにきて急に捜査に着手したわけではない。

しかも2017年2月には、東京地検特捜部がフランスの検察からの捜査共助の要請を受け、竹田氏に対して事情聴取を行っていたことが判明している。協力を求めた相手国の捜査機関の足を引っ張るような行為を先進国のフランスがするだろうか。フランス政府は反日感情を煽る韓国政府やしたたかな外交を展開するロシア政府とは違う。

最近、フランス政府は自国の大手自動車メーカーのルノーに対し、会長兼最高責任者(CEO)にとどまるゴーン氏を解任するよう求めたという。日本の検察の捜査にフランス側が理解を示した結果の動きだと思う。

注意しなければならないのは、フランスと日本の司法制度の違いである。フランスでは民間同士の賄賂に関しても贈収賄罪が成立する。そこがJOCにとって大きな落とし穴となる可能性が強い。

2億3000万円で開催地を決めるための票を買収か

そもそも竹田氏に対する不正疑惑は、どこから火が点いたのだろうか。その導火線をたどってみよう。

これまでの報道を総合すると、端緒はロシアの組織ぐるみのドーピング問題だった。フランスの検察当局は2015年にセネガル人で国際陸上競技連盟(IAAF)前会長のラミン・ディアク氏とその息子がドーピングを黙認する代わりに多額の現金をロシア側から受け取っていた容疑で捜査を始めた。

IAAFの本部がモナコにあったことなどからモナコと密接な関係にあるフランスの検察当局が捜査を担当。その捜査の過程で東京五輪の招致疑惑が出てきた。ラミン氏は日本が招致活動を行っていた時期、国際オリンピック委員会(IOC)でかなり力のある委員だった。

フランスの検察当局は、竹田氏が理事長を務めていた東京五輪招致委員会が2013年、シンガポールのコンサルタント会社に2億3000万円を支払い、その一部がラミン氏側に渡り、東京でのオリンピックの開催を決める票の買収に使われたとみている。東京開催が決まったのはこの2013年だった。

竹田氏はコンサルタント会社と契約して、2億3000万円を送金したことを認めてはいるものの、「契約は一般的なものだ」と正当性を強調。2016年9月1日には、JOCが調査チームの報告書を公表し、「契約に違法性はない」と結論付け、不正疑惑を否定した。竹田氏は2017年と昨年12月10日の計2回、フランス検察当局から事情聴取を受けている。

今年1月15日の7分記者会見も、この報告書に基づいて自らの正当性を主張するものだった。