中国でQRコード決済が、急拡大した本当の理由

【田原】ならどうする?

【康井】決済の歴史を見ると、過去に大きくなっているのは囲い込んだ会社ではなく、オープンな戦略の会社です。たとえば世の中に「VISAカード」は1枚もなく、すべて「○○VISAカード」というように提携をしている。つまり「ネットワークを開放するので、みんなで使いましょう」と考えた会社が大きくなっています。私たちもオープン戦略を掲げています。たとえばトヨタファイナンスと提携して、「TOYOTA TS CUBIC Origami Pay」「LEXUS Origami Pay」といったものを展開をしています。今後スマホ決済にはもっと多くのプレーヤーが入ってくる。そうした企業様が入ってくるときに一緒に展開していければと思っています。

【田原】根本的なことを聞きたい。日本は現金8割で、キャッシュレスが進んでない。原因は何ですか。

【康井】スマホ決済において、日本が遅れている理由は、じつは1つしかありません。それは、現金に比べて経済合理性、すなわち、おトクになることに、これまでどの企業も本格的に投資を行ってこなかったから。いま中国では「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」が普及していますが、彼らはいままで何兆円という単位でマーケティングしてきています。それに比べ、日本はまだ二桁小さい金額です。だからまだこれからです。

【田原】それはスマホ決済の話ですよね。クレジットカード会社はこれまでたくさんマーケティングしてきたけど、やはり現金が強い。この問題はどうですか。

【康井】そこはコストの問題にいきつくと思います。クレジットカードは構造的に高コストだからお店側が及び腰になり、使えるお店が限られているんです。それでみなさん現金を頼りにする。この状況もスマホ決済や一連のキャッシュレス化の動きで変わっていくのではないでしょうか。

【田原】さて、康井さんは未来の銀行をつくりたいとおっしゃった。決済の次は何をしますか?

【康井】銀行の三大業務は預金、融資、為替。決済・送金は為替業務の一部にすぎません。ゆくゆくは預金や融資の領域、さらには保険販売や証券などのサービスも手掛けて、金融グループをつくりたいです。

【田原】でも、既存の銀行のコピーじゃおもしろくない。未来の銀行はどんな形ですか。

【康井】未来の金融機関はインターネットの上で動くので、手数料を中心としたビジネスモデルではなくなると考えています。情報通信の世界と同じです。昔はA地点からB地点に情報を運ぶときに切手代や電話代を取っていましたが、いまはメッセージのやりとりや検索までタダになり、フェイスブックやグーグルは広告で収益をあげている。これと同じゲームチェンジが金融でも起こります。未来の金融機関も、新たなビジネスモデルに転換していくと思います。

【田原】わかりました。頑張ってください。

康井さんから田原さんへの質問

Q. 日本の未来を明るくするには?

僕は日本の未来は非常に明るいと思ってますよ。理由は、康井さんのような人が出てきたから。

朝日新聞や毎日新聞が特集を組んでいましたが、いまの大学生に「就活でどんな会社に入りたいか」とアンケートを取ると、1位は倒産しない会社、2位は給料が高い会社、3位は残業のない会社でした。つまり自分がやりたいことがないか、あるいは、あっても我慢している。これは最悪です。

一方、非常に高給取りだった康井さんがその座を捨てて起業したように、高い志を持って自分のやりたいことをやる若い人も増えてきた。大企業に勤めている人たちの間にこの動きがもっと広がっていけば、日本の未来は明るくなるはずです。

田原総一朗の遺言:若者よ、やりたいことをやれ!

(構成=村上 敬 撮影=枦木 功)
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