競合から見た、PayPayの100億円キャンペーン

【田原】それはお店と買い物客両方にメリットがあるね。お店側にもメリットがないと加盟店は増えないと思うけど、お客と繋がれること以外にもメリットはありますか?

東京五輪を見据えて政府も支援するQRコード決済。市場は23年には約8兆円になると見込まれている。Origami Payのほか、LINE Pay、楽天ペイ、ソフトバンクとヤフーが株主のPayPayなど各社のユーザー獲得キャンペーンも熾烈に行われている。

【康井】まず先ほど言った手数料ですね。クレジットカード決済の場合、地方の小さなお店では、高い手数料を払っていることもあります。それに対して「Origami Pay」は0~3.25%です。また、導入コストもかかりません。クレジットカード決済はカードを読み取る機械をお店が購入しなければならないことが多々あります。一方、QRコード決済なら、高い機械を導入しなくてもステッカー1枚貼るだけで決済を受け付けられます。

【田原】スマホ決済の利点はわかりました。康井さんの会社の収益源は何ですか。さっきの決済手数料?

【康井】それに加えて広告収入があります。ユーザーに対して販売促進の案内を送りたいといった企業様の広告も収益源となっています。

【田原】いま従業員は何人ですか。

【康井】どんどん増えていて、いま約150人になりました。

【田原】このまえソフトバンクグループが「PayPay」の100億円キャンペーンをやって良くも悪くも話題になりましたね。あれは「Origami Pay」の競合でしょう? 康井さんにとって大手の参入は脅威ですか。

【康井】大手の企業が入ってくるのは非常に素晴らしいことだととらえています。そもそも、われわれの敵は現金だと考えています。スマホ決済は非常に大きな産業で、われわれ一社では立っていられないですから。

【田原】どういうこと?

【康井】決済の市場は小売りだけで140兆円あって、その8割が現金です。私たちはそこにスマホ決済を普及させて、お金の動きを変えようとしている。日本で初期にQRコード決済を始めたのも私たちです。ただ、これまでに「QRコード決済って何ですか」と何度も聞かれていて、普及させるのも一筋縄ではいかなかった。また、うまく普及させたとしても、この市場は、一社が独占するには市場規模が大きすぎて難しいと感じます。それはクレジットカードの歴史を見ても一社で独占されていないことからも明らかです。このような市場なので、大手の参入で裾野が広がったほうがありがたいです。

【田原】いま競合はいますか?

【康井】日本でスマホ決済の会社で大きな加盟店ネットワークを持っている会社は複数ありますが、独立系は私たちだけです。

【田原】独立系は不利ですか?

【康井】大手とは戦略が異なります。日本の大手は、ポイントでお客様を囲い込んで経済圏をつくる戦略で動いている。囲い込みは、もちろん効果的な戦略ですが、Eコマース市場でなく決済という非常に大きな市場では、状況は異なってくると考えています。