「オレの遺伝子は優秀なのに、オマエが足を引っ張っている」
ところが、その頃から夫のモラハラが本格的にスタートしたのだった。「息子の成績が悪いのは、オマエがバカなせいだ」「オマエに似たせいで、息子も勉強をしないんだ」「オレの遺伝子は優秀なのに、オマエが足を引っ張っている」などと妻に向かって言い放題。メールでもB美さんをバカにするようなののしり言葉を送ってくるようになったという。B美さんは、夫からの心ない発言に傷つき、眠れない日々が続いた。
そんな2人の離婚が成立したのは、子供が地元の公立中学に入学した後だった。「夫のモラハラを証拠として形に残そうと、すべての発言はICレコーダーに録音、すべてのメールもファイルに保存して弁護士に提出しました」。軽んじていたはずの妻から離婚を突き付けられた夫は、弁解の余地もなく慰謝料と養育費をきっちり支払って家を出て行くことになった。
たった一言が離婚を招くかもしれない
自分ではモラハラの意識がなくても、相手が「このままでは自分らしく生きていけない」「幸せな結婚生活ではない」と感じたら、それは立派なモラハラになる。たったひと言のモラハラ発言が離婚を招くことにもなりかねないので、次に紹介する3つのワードには細心の注意を払いたい。
・経済的な弱みに関すること
「誰の稼ぎで暮らしているんだ」「オレが食わせてやっているんだからな」など、経済的な弱みに関する発言はもっともNGなモラハラワード。むしろ、金銭的に評価されにくい家事や育児を担う妻に感謝する必要があるはず。
・コンプレックスに関すること
「太っていてみっともない」「老けすぎだろう」といった容姿のことや、「こんなことも知らないのは大学に行っていないからか」「オマエのバカが子どもに遺伝した」といった学歴のことなど、自分ではどうにもならないようなコンプレックスを刺激する発言は間違いなく相手を傷つけるもと。
・親や親戚に関すること
「親の育て方が悪い」「だから田舎者はダメなんだ」「親戚もパッとしないね」など、親や親戚にまつわる悪口はトラブルを招くだけでなく、相手が憎しみを募らせる原因になることに注意。
モラハラによる離婚やトラブルを防ぐための一歩は、「これって、ひょっとしたらモラハラ?」と自分自身の言動を見直すこと。夫婦だからといって甘えすぎず、自分の言動により相手がどう思うかを考える意識を持つことが必要だ。それは、いつまでも円満夫婦でいられる秘訣でもある。
夫婦問題研究家
NPO日本家族問題相談連盟理事長。株式会社カラットクラブ代表取締役
立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科修了 自らの離婚経験を生かし、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。これまでに25年間、3万件以上の相談を受ける。『最新 離婚の準備・手続きと進め方のすべて』(日本文芸社)『再婚で幸せになった人たちから学ぶ37のこと』(ごきげんビジネス出版)など著書多数。