AIに負けない子育て法

【新井】それがある意味、妙な革命なんだなと思ったのです。

【佐藤】ああ、それは思いますね。文学のほうで見ると、その辺の革命を一番よく表しているのは、作家の柚木麻子さんですね。例えば、『伊藤くん AtoE』とか。

【新井】『ポトスライムの舟』で芥川賞を受賞した津村記久子さんもそうですね。あの辺の人たちの小説を読んでいると、まさにそうだと思います。今のプロレタリアート文学は『蟹工船』ではなくて、『ポトスライムの舟』なのです。

【佐藤】村田沙耶香さんの『コンビニ人間』、窪美澄さんの『アカガミ』など、女性作家たちが描くものは非常にリアルだと思いますね。

【新井】それは、彼女たちの世代が一番ひどい目に遭っているからでしょう。

だから、今そういう文学が出てきているのでしょう。そのくらい、GAFAによって、今とてつもない搾取が行われている。おそらく、今一番大きな危機に直面しているのが、国民国家です。将来的に人口減少は進み、再配分も成り立たなくなるでしょう。しかし、それを国民国家は阻むことができない。

【佐藤】そのとおりです。

【新井】今の状況を考えると、将来、日本でAIネーティブたちが子育てしたとき、本物の社会や本物の人間とコミュニケーションできるかどうか、大きな懸念を持っています。危機に直面する経験がなければ、問題解決することはできません。お腹が減る前に、おいしいものが次々と出てくる世の中では、渇望もなくなってしまうのです。

【佐藤】食欲も性欲も、そういったものすべてが飼い慣らされてしまうわけですね。