先輩を「諭した」5億ドルの出資

<strong>奥 正之</strong>●おく・まさゆき 1944年、長野県生まれ。68年京都大学法学部卒業、住友銀行入行。91年シカゴ支店長、92年国際業務部長、94年取締役、98年常務。2001年三井住友銀行発足により同行専務。05年頭取。08年よりパナソニック取締役も務める。
三井住友銀行頭取 奥 正之●おく・まさゆき 1944年、長野県生まれ。68年京都大学法学部卒業、住友銀行入行。91年シカゴ支店長、92年国際業務部長、94年取締役、98年常務。2001年三井住友銀行発足により同行専務。05年頭取。08年よりパナソニック取締役も務める。

1986年9月、ニューヨークに出張していた先輩から電話が入る。先輩は、米国で企業向け投資銀行業務を拡大するために、有力投資銀行のゴールドマンサックスへ出資する交渉を進めていた。だが、金融機関を監督する連邦準備銀行が、様々な制限を加えてきた。出資比率は8分の1にとどめる。それも、議決権のない株式とする。さらに、ゴールドマンは、住友銀行からの実習生を受け入れてはいけない。東京で計画している両社の合弁会社にも、住銀は人を送り込んではいけない。

日米とも、銀行と証券会社は別々に活動する「銀証分離」の時代だった。だから、制限は投資銀行業務、日本で言う証券業務への住銀の関与を、連銀が嫌ったためだろう。ゴールドマンが、独立性を維持するために、働きかけたのかもしれない。でも、そこまで痛めつけられては、当初の構想から大きく後退する。