いくらかかるかより、いくらかけるか

また、介護保険施設のひとつである「老人保健施設(老健)」に入所するという選択肢もある。施設というと“終の棲み処”というイメージがあるが、老健は本来、在宅復帰を目的としたリハビリ施設である。入所条件は原則65歳以上、介護認定が「要介護1」以上。介護度が上がり、「要介護3以上」になると「特別養護老人ホーム(特養)」も視野に入ってくる。いずれも公的施設のため、費用はリーズナブル。親の年金の範囲内でまかなえる。さらに、経済力があれば、有料老人ホームをはじめとする民間施設も選択肢に入る。

だが、民間施設となると介護費用の負担も重くなるのではないだろうか?

「有料老人ホームでも、地域によっては月々の負担が10万円台という施設もあります。親の年金で払える価格帯の施設を探し、退院と同時に体験入居をスタートさせる。親が納得してくれれば、そのまま入所というケースも少なくありません」

施設を探す場合と在宅で介護する場合、親の自宅と子どもの自宅、どちらがいいのか? 「老健や特養といった介護保険施設への入所を希望するなら、親の住民票がある場所のほうが入りやすいケースが多い。民間施設であればどちらでも構わないが、まずは親御さんへの意思確認が先決。子どもの自宅近くへ移動する場合、高齢の親にとって住み慣れた場所を離れ、知り合いがいない土地に引っ越すことで想像以上にストレスがかかるものです。地域によって、食事の味付けも言葉も違う。地元の人間関係からも離れることを念頭に置きながら、家族でよく話し合い、慎重に検討しましょう」。

遠距離介護はどうか? 交通費もかかり、負担が大きいイメージがある。だが、遠距離介護にもメリットがあると太田氏は指摘する。

「距離がある分、気持ちを切り替えやすく、お互いにやさしくなれます。また、介護保険などのサービスも、高齢者のみの世帯のほうが利用できる選択肢が増えて有利。特養などの公的施設では『介護者が他府県にいる』と優先順位が高くなる傾向もあります」

気になるのが介護費用だ。そもそも、いったいいくらかかるのだろうか。

「まず、介護費用は親本人のお金をあてるのが原則。介護の目的は、あくまでも親の自立した生活を応援することにあるからです。そして、『いくらかかるか』ではなく、『いくらかけるか』を考える。親世代の主な収入源は公的年金です。その中から介護にいくらかけられるかを検討し、その範囲で“できる介護”を行う。預貯金を取り崩す場合は、最低でも100歳まで生きると想定し、月々いくらまでならかけられるのかを試算してみましょう」