もともと折り合いが悪い兄弟なら、同居した兄が親に遺言書を書かせて「囲い込み」をすることさえあります。矛盾する内容の遺言書が2通あった場合、日付の新しいほうが有効になるので、弟に有利な(新しい)遺言書を作らせないためにも「一切会わせないぞ」というわけです。当然、親の死後は「無理やり書かせたのではないか」と弟に疑われ、「争続」は必至です。

▼よくある兄弟姉妹の揉めごと4大事例
【CASE1】もっとあるはずだ!
親が高齢になったり、認知症を発症するなどして、同居する子どもにキャッシュカードの管理を任せていると、後々、同居していなかった子どもから「もっと貯金があったのではないか」と疑われる。
【CASE2】住み続けたいvs売りたい
きょうだいのいずれかが親と同居していた場合、その家の資産価値が高いほど、「住み続けたい」人と、「売ってお金にして分けてほしい」人とで対立する。
【CASE3】親に会わせろvs面会謝絶
遺言書が2通あった場合、日付が新しいほうが有効になる。そのため、きょうだい仲が悪い場合、後から相手側にとって有利な遺言書を書かせないよう、親を施設に囲い込んで面会謝絶にしてしまう例も。
【CASE4】親の介護をした分、多く相続させろ
両親や義父母などを看続けても、貢献度に見合った財産分与が行われることはなかなかない。日常の世話や通院を手伝った程度では該当しないうえ、相続人全員の同意が必要になるためだ。

このようなトラブルを何千件と見てきた私から言える唯一の予防策は、きょうだい仲良く。そして、親が元気なうちに財産の分け方を家族全員に説明してもらうことです。相続トラブルは一見、金銭の取り合いに見えますが、その実、親の愛情の取り合いという非常に感情的な側面もあります。遺言書に「不動産は兄に残す」と書くだけでなく、その理由を親の口から伝えてもらう。兄嫁への感謝の言葉を伝えてもらう。これがあるだけで相続人=子どもの納得感はずいぶん違うのです。

眞鍋淳也
弁護士
公認会計士。1995年、一橋大学卒業後、監査法人、会計事務所、法律事務所勤務などを経て2009年に南青山M's法律会計事務所を設立。06年成蹊大学にて法務博士号取得。