――ランキングで1位になった要因

【松本】『道をひらく』はすぐに役に立つビジネススキルや知識を覚えるための本ではありません。いくら世の中が変わっても変えてはいけない「生き方」を学ぶ本です。例えば、直面した困難をどう乗り越えるか。自分と合わない人といかに接するべきか。人生の中で誰もが迎える試練やトラブルでの気持ちの持ち方や不変の価値観。そうしたいつの時代も決して変えてはいけないものを『道をひらく』は教えてくれるのです。

小宮コンサルタンツ 会長CEO 小宮一慶氏

RIZAPのCOOになってまだ3カ月しか経ってないから、ここの社員には言わないけれど、2018年の6月まで会長兼CEOを務めていたカルビーの社員には「本を読みなさい」と口を酸っぱくして言っていました。月に1回、全国各地の社員向けに勉強会を開いて、その場で僕が繰り返し言っていたのは、第1に「本を買え!」、第2に「どんな本も30ページは読め!」、第3に「面白かったら全部読め、つまらなかったら即捨てろ!」。本は高くても1冊数千円と安い。安いのに、読めば、何かが学べる。これほどコストパフォーマンスのいい自己投資はありません。たくさんの書物に触れる中で、『道をひらく』のような永久保存版にしたくなる「当たり」の作品との出合いも出てくるのです。

【小宮】『道をひらく』の考え方は、2000年以上前に書かれた『論語』や、儒教・仏教の考え方が根底にあります。論語が不変であるように『道をひらく』の価値も色あせません。そのことが「1位」の最大の理由でしょう。ずいぶん昔の本なので、時代錯誤になっている部分もあるのではないか、と考える人もいますが、時代を経ても「原理原則」は同じです。

トルストイの『アンナ・カレーニナ』の冒頭の一節に「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」とあります。経営コンサルタントとして多くの企業を見ていると、成功する人には3つの共通項があることに気づきます。それは「前向きである」「利他心がある」「素直に自分をきちんと反省する」。ごく当たり前なことに感じますが、これができない人が多いのです。でも、『道をひらく』を読むことで、そのエッセンスを身につけることができます。