演者がどんなに命がけでも、もはや感情移入できない

文春は、日テレの情報・制作局長の加藤幸二郎氏のこういう発言を取り上げている。

「番組の人格で『イッテQ』は笑いをやっているけれども、相手に対して失礼なことをしているという人格がないから、許してもらえていると思う」

ない祭りをでっち上げ、ラオスやタイの国民を笑いものにすることが「失礼」なことだとは考えなかったのだろうか。

11月15日には日テレの大久保好男社長が謝罪し、祭り企画を当面休止することを発表した。だが、番組自体は当面続けるようだ。

朝日新聞(11月17日付)は、社説で「人気バラエティ番組にいったい何があったのか。すみやかに真相を明らかにして、社会に報告する責任がある」と厳しく批判し、第二社会面でも「『やらせ』疑惑晴れないまま」として、大久保社長が会見でヤラセかどうか明言しなかったのは、「『やらせ』はテレビにとっていちばん嫌な言葉で、ダメージが大きい。なんとかそれを避けて『やりすぎだった』というレトリックで収めなければならない。番組を終わらせたくないのだろう」と、在京キー局の幹部に語らせている。

しかし、この件で視聴者の見る目が変わってくるはずだ。これからは、どこにヤラセやデッチ上げがあるのかを探す楽しみが加わり、演者がどんなに命がけであろうと、もはや感情移入できないだろう。

視聴者が離れ、遠からず番組が消えていくことになるのではないか。

このままでは「ブスを採らない」フジテレビの二の舞になる

文春の最初の報道に対して、日テレ側の当初の対応はメディアとは思えないほどお粗末だった。その背景にある事情について週刊ポスト(11月16日号)がこう報じていた。

58カ月にわたり「月間視聴率3冠王」を続けてきた日テレが、王座から陥落したというのだ。抜いたのはテレビ朝日。

平日の午前と午後のベルト番組が苦戦しているからだそうだが、鳴り物入りで起用した有働由美子の『news zero』もいまや5%を切ることがあるそうだ。

長年視聴率トップに君臨してきたフジテレビは、マンネリドラマと局アナを使った安直なバラエティ番組が飽きられ、王座から陥落し、今やテレビ東京に迫られる凋落ぶりである。

話は横道にそれるが、全盛を誇っていたフジの名物アナウンサー氏を、私が教えている法政大学に招き、講義をしてもらったことがある。アナウンサー志望の女子学生も多くいた。そこで彼は、こういったのだ。

「フジテレビはブスは採りません」

フジは、アナウンサーとしての資質よりも、美人かそうでないかが判断の決め手になるというのである。たしかに、一時、フジの女子アナは美人ぞろいで、視聴率に貢献した。

だが、女子アナは消耗品だと気づいた彼女たちは、早々に結婚したり自主退社していったりした。やがて、綺麗、可愛いだけでまともにニュース原稿も読めない女子アナは、視聴者から飽きられていった。

フジから王座を奪取した日テレにとっても、トップの座を譲れば、広告主が離れ、フジの二の舞にならないとも限らない。