日本人駐在員が放送を見て不審に思った
5月20日に放送された「橋祭りinラオス」がそれである。芸人の宮川大輔が世界各地で行われている祭りに突撃参加して、その模様を伝える人気のコーナー。
宮川が参加した祭りは100回以上になるそうだが、今回のロケ地はラオスのビエンチャン。年に一度開かれるという橋祭りは、全長25メートルの細い板(これを橋に見立てている)の上を自転車で渡るのだが、4つの球が回転していて、これに衝突するとたちまち泥水に落下してしまう。
20人の参加者による勝ち残り方式。VTRでは会場の盛り上がりも紹介しながら、「町中の人が集まってきた」というナレーションが入る。
この地に赴任して数カ月という日本人駐在員が、この放送を見ていて不審に思った。こんな祭りを聞いたことはないし、周りのラオス人に聞いても誰も知らなかった。
そもそもこの地域ではバイクには乗るが自転車に乗る人はあまりいない。「視聴者だけでなくラオス国民を馬鹿にした」番組だと文春に告発したのだ。駐日ラオス大使館に問い合わせたが、そんな祭りは聞いたことがないという。早速文春は現地へ飛んだ。
宮川大輔は文春に対し「しっかり調べてください」と言った
現場は、ビエンチャンの中心から徒歩10分の、乾期で干上がってできたメコン川の河川敷。結論からいうと、当日行われていたのはラオス産のコーヒーを宣伝する「コーヒーフェスティバル」で、その隅っこで、番組のスタッフが設営し、撮影したものだった。
コーヒーフェスの実行委員たちは、日本のテレビ局が自転車のアクティビティをやりたがっていると連絡があり、自転車と障害物のボールは日テレ側が用意したと話し、『イッテQ』の映像を見せると「フェイクだね」と断言したのである。
その上、日テレ側は、参加した若者たちに、1位は日本円にして約1万7000円、2位以下にも現金や撮影で使った自転車をあげていた。
これではヤラセなどのレベルではなく、架空の祭りをでっち上げ、視聴者にウソをつき、ラオス国民を侮辱したといわざるを得ない。
だが、これを手掛けたバンコクを拠点に通訳やコーディネートをしている社の日本人社長は、「橋祭りはラオスで行われている」と強弁した。日テレ広報部も「橋祭りはメコン川流域などでかねてから行われている催しで、地元のテレビ局などでもとりあげられております」と、反論したのである。
宮川は文春の直撃に対して、ヤラセがあったかどうかは分からない、橋の祭りと聞いていたからびっくりしたといいながらも、「取材の最後、記者の目を見据えて、こう口にした。『しっかり調べてください』」(文春)
日テレ側は11月8日にも、「『セットなどを設置した事実はなく、番組から参加者に賞金を渡した事実もございません』と説明」(デイリースポーツオンライン11月8日)したという。