2020年に照準 外需取り込みへ攻勢

そもそも、ライブキッチンの構想が生まれたのは3年前からだという。2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに照準を合わせ、ようやく日の目を見たプロジェクトだ。「好機を最大限に生かしたい」(臼井氏)と意気込む。

翻って国内市場を見れば、長期的には少子高齢化に伴う人口減少という業界各社共通の「壁」にぶつかることになる。国内事業のみに頼っていては、持続的な発展に限界があることは想像に難くなく、同社の成長も他社の例に漏れず「海外」での成功にかかっている。

競合他社との海外シェア獲得争いも一層激しくなることが予想される中、攻勢を仕掛けるのに「2020年」を活用しない手はない。

あえて「和風」を押し出さない理由

ライブキッチンからは、日本文化を輸出するにあたってのアプローチの新しさも感じ取れた。内装や盛り付けに使う食器は、ところどころに和風のモチーフを意識しながらも、モダンでボーダーレスな雰囲気を演出している。フレンチやイタリアン、中華といった異なるジャンルの料理が出されても違和感がないようにするのが狙いだ。

「私たちのテーマは、あくまで融合。一方的に自分たちの文化を輸出するのではなく、多様な文化の境界が溶け合い、相乗効果を生むコラボレーションです」(臼井氏)

シェフ・料理人には「特別に当社の調味料をPRしてほしいとはお願いしていない」と臼井氏。だが、多国籍の食文化が響き合う料理を楽しんでもらうライブキッチンは、五感を通じて「グローバルスタンダード」としてのしょうゆを印象付けられる絶好のステージになることは間違いないだろう。

レストランのエントランス。六つの点が「六角マーク」を思い起こさせる(撮影=プレジデントオンライン編集部)

ちなみに、同店のシンボルとして使用されている新しいロゴは、伝統の「六角マーク」を思い起こさせる六つの点から成る。

「世界は五大陸に分かれますよね。それを結ぶ『六つ目』の点がキッコーマンでありたい。実はそんなメッセージも込められているんです」(臼井氏)

「モノを売る」ところから一見離れた新業態を通して「食文化を豊かにすること」を目指す同社。その効果は2020年以後、どのように表れてくるのだろうか。

加藤藍子(かとう・あいこ)
ライター・エディター
慶應義塾大学卒業後、全国紙記者、出版社などを経てライター・エディターとして独立。教育、子育て、働き方、ジェンダー、舞台芸術など幅広いテーマで取材している。
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