だから私は、そもそも人を「使える・使えない」「いい人・悪い人」といった基準で評価しない。どの人についても、この人のいいところはここ、努力する必要があるのはここ、というふうに分けて考える。そしてその都度、その人の振る舞いや行動の結果については「今回はいいところが出たな、今回は悪いところが出たな」というとらえ方をする。

近寄ってきてくれたのがうれしくて、安易に「彼はすごく使える」とか「使えない」といった評価をしてしまうと、3カ月後にひっくり返るようなことになりかねない。そうなった場合、マネジメントとしての資質を疑われるのは当然だ。

「来ないで」とお願いしても出社する社員

私が社長として社員の一生のお願いを聞く一方で、逆に私が「頼むからこうしてくれ」と社員にお願いをすることもある。これが、なかなか聞いてもらえない。「組織はトップダウンでたちまち変わる」などとカッコいいことを私が言えないのは、これが理由だ。

社長本人が現場に出張り、スタッフに面と向かってこれだけの言葉を尽くしてもなお、何かにつけて「本当に、いいんですか?」という確認が入るのである。それほどに、組織に根付いたルーティンや風土を変えるのは、難しい。

風邪をひいているのに喜々として出社してくる社員がいた。無理して働いても、風邪が長引くばかりか、お客さまや同僚に風邪をうつしてしまう恐れがある。だから「来ないでください、帰ってください」と再三お願いしているのに、「熱が38度ありますが、頑張ります!」というのだ。とんでもない話である。