伸びる会社はどこが違うのか。倒産寸前だったメガネスーパーをV字回復させた星崎尚彦社長は、「組織の機動力を高めることが重要だ」という。たとえば同社では多くの承認をメール1本で済ませている。それは中小企業特有の「ワンマン経営」だからではない。すぐに承認できる質の高い提案しか上がってこないからだ。なぜそうなったのか――。

※本稿は、星崎尚彦『0秒経営 組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方』(KADOKAWA)を再編集したものです。

「いいからやれ」は使用厳禁

私のことをワンマン社長だと思っている方がいる。確かにそういう一面もあるだろう。言葉遣いは荒っぽいし、いつも現場にいて、接客状況、商品動向、お客様の声などなど経営判断に必要なデータも現場で、ライブで掌握し、指示を出している。中小企業の経営は、社長が現場を知らずにできるほど甘くはないのだ。

星崎尚彦『0秒経営 組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方』(KADOKAWA)

しかし一方で、メガネスーパーでは「いいからやれ」は禁句、使用厳禁である。世のワンマン社長のなかには「いいからやれ、とにかくやれ」のひとことで会社を動かそうとする方も多いが、それはメガネスーパーでは絶対に認められない。

「いいからやれ」のマネジメントでは、人が伸びないからだ。人間の成長は無限だと思っている。そのためには「自分の頭で考えてもらうこと」が絶対的に必要だ。ところが「いいからやれ」は人を思考停止に陥らせる。だから絶対に使わない。

ではどうやって全員一丸となって動くのか。

議論を尽くすのである。相手が社長だろうと上司だろうと腹を割った徹底的な議論こそが、圧倒的スピードでPDCAを回す「0秒経営」を支えている。

メガネスーパーでは多くの承認をメール1本で済ませるが、それは承認システムが優れているのではなく、メール1本で承認できるだけの案が上がってくるからに他ならない。日ごろから徹底的な議論を重ねる鍛錬を積んできたからこそ実現できたことだ。

ここに来るまでの道のりは長かった。全員で、相当な訓練をしてきた。だが、今でも激怒することはある。それは、ていのいい提案やプレゼンを聞かされたときだ。

「予算内の提案」に激怒するわけ

まず、提案があったら「なぜならば」の説明を必ず求める。メールだけ送ってきて「A案、B案、C案からご判断ください。すべて予算内です」と求めてくるのは、メガネスーパーのありたい姿ではない。

「予算内」といわれると私は怒る。やるべきだからやるのではなくて、予算内だからやるのか? 予算内であれば使ってもいいのか? と突っ込みを入れまくる。社長に判断を委ねるのではなく、自分で考えを突き詰めて、正しいと思うものを提案するべきだ。それができると、議論を深められる。

あるダイレクトメール施策で「予算以上に使いたい。なぜならば~~」という稟議があがってきた。私は最初、「君の説明では、『なぜならば』の理由がまったくわからない」と言った。横で聞いている者には、私が反対しているように聞こえるかもしれない。しかし実際は、ただ「わからない」「納得できないからもう一度」と言っただけだ。普通の会社なら、ここは社員が社長の意見を忖度し、合わせにいくところではないだろうか。