北千住東口の駅前で大きな建設工事が行われている。神田から移転する東京電機大学の新キャンパスで、完工は2011年末。W棟、E棟の施工は大林組だ(元請け会社は住友商事)。同社は現在、東京の新名所、東京スカイツリーの建設も担当している。
工事現場の朝礼は毎朝7時40分からの約20分間だ。参加者は9月時点で250名だが、最盛期は1000名を超えるという。時間になると、ヘルメット、安全靴に身を固めた人々が現場事務所の前に集合する。「ございますっ」という気合の入った挨拶で始まり、まずはラジオ体操だ。
その後、参加者が一列縦隊になり、前の人の肩に手をのせて、静止した。……いったい、どうしたのだろう?
次の瞬間、司会者が、どすの利いた声で「よーい、始め」と号令をかけた。とたんに、全員が前の人の肩をこちょこちょともみほぐし、そしてトントンと叩き始めた。肩もみと肩叩きが始まったのである。呆然と見ていた私に現場所長の川原純一氏が声をかけてきた。
「肩もみは朝礼で必ずやります。工事現場は大林組の社員だけでなく、協力会社の方々が一緒に仕事をします。つまり、知らない者同士が一緒に働く、混在作業の世界なのです。朝礼で肩もみをすることは一体感をもたらします」
見ていると、「おや、意外と肩が張ってるねえ」なんて話しかけながら肩もみをする人もいる。みんな、その間だけは緊張がほぐれている。
実は、大林組に限らず、工事現場の朝礼では「肩もみ」はスタンダードになりつつあるようだ。しかし、残念ながら発案者はわかっていない。
見知らぬ者同士に親近感を醸成するため、欧米ならば握手や、ハグをするだろう。しかし、ここは日本だ。抱きつくことに慣れない人は多い。職場の一体感を醸し出すため、オフィスでも肩もみをするといいのではないか。
(尾関裕士=撮影)