隠したクルミを盗み食いされてしまうニホンリス

秋のニホンリスたちは冬支度の真っ最中で大忙し。夏には短かった毛がふわふわの冬毛となり、耳の先にも筆の穂先のような房毛が生えて冬の装いは整いましたが、食料がまだまだ心配です。ニホンリスがくわえているのは大好物のクルミの実。落ち葉をかき分け、そこにクルミを置くと、また落ち葉をかけて隠します。木の枝のつけ根にはさんで隠すこともあります。ニホンリスは冬眠しません。そのため、冬のあいだの食料をあちこちに隠しておくと考えられています。

ニホンリスは冬の食料をあちこちに隠す(画像=『春・夏・秋・冬 どうぶつえん』)

動物園で見られる光景はここまでですが、野生のニホンリスとクルミの付き合いには続きがあります。なかなか計画的に準備していると思いきや、まず手に入れたクルミの実の4割ほどをすぐに食べてしまいます。そして、実際に冬に食べるのは、隠したクルミのさらに4割程度。一部は野ネズミなどに盗み食いされ、残りはそのまま放置されます。これらのクルミのなかから、やがて芽吹き、ニホンリス自身を養う次の世代の森の木になっていくものが出るのです。

チンパンジーもネギで風邪予防

冬の陽だまり。のんびり座ったり、緩く握った手をついた独特の姿で歩いたり、あるいはお得意の枝渡りでロープを伝ったり、チンパンジーたちはそれぞれにくつろいでいます。しかし、かれらが手に、時には足にしているものはちょっと変わっています。ネギ、ネギ、ネギ……。日本の冬はアフリカよりもずっと寒いため、チンパンジーも風邪をひくことがあります。動物園では、暖房や栄養など、かれらの風邪予防に心を配っていて、ネギもそのひとつです。ネギは体を温め、喉にもよいと言われていますが、ヒトに効くのであれば、ヒトに近いチンパンジーにもよいだろうという発想です。

そもそもチンパンジーは、ネギが大好き。飼育員がネギを与えると、争うようにネギを取りにいく姿も見られるほど。野生でも、イチジク類など甘い果実のほかに、しばしばショウガ類などの刺激性の強いものも食べています。チンパンジーにはグルメな一面もあり、果実はおいしい果汁だけを吸い取り、残った繊維のかたまりは吐き出すことがあります。この吐き出したかたまりは「ワッジ」と言い、ワッジは群れの行動圏の証です。

ネギが大好きなチンパンジー(画像=『春・夏・秋・冬 どうぶつえん』)