動物園をどのように楽しんでいるだろうか。動物を眺めるだけで済ませるのはもったいない。動物には、季節限定の姿があり、その「うんちく」を知ると、一層楽しめる。1年の半分は動物園に通う「動物園ライター」の森由民氏が、思わず話したくなる6つの“秘密”を紹介する――。

※本稿は、『春・夏・秋・冬 どうぶつえん』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。

“イクメン”化するライオン(画像=『春・夏・秋・冬 どうぶつえん』)

動物園のライオンはイクメン化

春の動物園は出産ラッシュ。ライオンにも赤ちゃんが生まれます。お父さんライオンも、生まれてきた子どもたちと遊び、丹念になめて毛づくろいをするなど、百獣の王の顔からすっかり優しいお父さんの顔になっています。こののどかさは、ほかのオスと競う必要がない環境にいるライオンならではの姿です。

最近の研究では、群れの基本はメス同士のつながりだと考えられていて、オスはほかのオスに勝つことでメスたちに認められ、受け入れられます。そのため、野生ではオス同士が激しく戦いますが、動物園では、おとなのオス1頭だけで群れを組ませるのがふつうなので、オス同士の競い合いがないのです。ちなみに、メスが好むルックスは、黒々としてふさふさしたたてがみの持ち主。強くて健康なオスの証しなのです。

なお、ネコ科の動物は、おとなになるとオスもメスも単独でくらします。動物園でトラなどが1頭ずつで飼育展示されているのは、このためです。かれらは出会って交尾し、その後の子育てはメスだけで行います。ネコ科の家族にはお父さんがいないのがふつうで、その意味でも動物園のライオンの姿は珍しいのです。

授乳疲れで白髪になるフラミンゴ

何かを育てることを「はぐくむ」と言いますが、一説には親鳥が卵やヒナを羽でくるむようす「羽+くくむ(くるむの古語)」からできた言葉なのだそうです。春の動物園で、父母ともに「はぐくむ」姿を見せてくれるのが、フラミンゴです。

フラミンゴ夫婦は絆が固く、夫婦が協力して子育てします。ヒナは、人間で言うと母乳のような「フラミンゴミルク」という栄養満点の液体で育つのですが、フラミンゴミルクは消化管の一部からつくられるので、父フラミンゴからも与えられるのです。

フラミンゴ夫婦の絆は固い(画像=『春・夏・秋・冬 どうぶつえん』)

産まれたヒナが巣立つまでの期間は約1カ月。たったひと月とはいえ、子育て熱心な親のなかには、チャームポイントのピンクの羽毛が白くなるのもいます。ピンク色はエサとなるプランクトンの色素のおかげです。フラミンゴミルクにこの色素が大量に入ってしまうため、自分の色が抜けてしまうのです。

フラミンゴといえば、大群でいるイメージがありますが、それは危険への防衛のためで、ふだんの活動自体は夫婦ごとが基本。あの大群のなかで、お隣さん同士の夫婦は、縄張りを主張して小競り合いすることもあり、ご近所トラブルも珍しくありません。