トナカイのメスはクリスマスイブも仕事
クリスマスにサンタクロースのソリを引く、立派な角のトナカイ。当然、オスかと思いきや、そうではありません。冬のトナカイは、なんだか変です。トナカイはシカの仲間なので、角があるのがオスのはずなのに、角があるほうが小柄で、角がないほうが大柄なのです。
実は、トナカイはシカの仲間で唯一、オス、メスともに角があります。そしてほかのシカと同じように、秋の繁殖期が終われば、オスの角はぽろりと落ちてしまうのです。一方、メスは冬になっても角を生やしたまま。角が落ちるのは春になってからです。つまりクリスマスに角が生えているのはメスなのです。
このことは、極北の厳しい環境にも耐えられるように進化してきたためと考えられます。秋の繁殖期を経て、メスのお腹には赤ちゃんがいます。しかし、かれらの地元である凍てつく大地は自分が生き残るだけでも厳しい環境です。トナカイの大きなひづめは凍った雪を砕いて地衣類(藻類と共生している菌類の仲間)などを食べるのに役立ちますが、メスの角も雪を掘る助けとなります。また角が落ちたとはいえ大柄なオスと張り合って冬を生き延ひるのにも役立っていると考えられます。
「サル団子」で暖をとるニホンザル
ニホンザルは、冬の寒い日にはみんなで寄り集まり、まるで団子のようにまとまります。これを「サル団子」と呼ぶのです。ニホンザル版おしくらまんじゅう、といったところです。
ヒトを除けば、ニホンザルはもっとも高い緯度(青森県下北半島)まで分布する霊長類です。しかし、これは決して積極的に寒さを好むというわけではありません。一部の地域で有名になっている、温泉につかるといった習性を含め、温まるためにあれこれ工夫をしています。サル団子もそのひとつです。
サル団子は平和的。くっついてくる相手をこばんだり、誰かを仲間はずれにするといったことは、ほとんどありません。結果として、段々と大きな団子になっていきます。それでも誰と誰がどんなふうにくっついていくかを観察すると、群れのなかでの互いの親しさなどが読み解けると言われています。母系なので親しいメス同士がくっついていき、そのようなつながりが多いメス個体のあたりで団子がふくれあがるなど、全体として団子のかたちも変わってくるのです。ある研究では、幼い子のいる母ザルは母子でのサル団子を好み、子のないメスはほかの個体を毛づくろいしてから一緒に団子になる傾向があるそうです。
動物園ライター
1963年12月27日生まれ。1年の半分は動物園に通う。日本各地の動物園を訪れ、飼育員さんと動物のかかわり、動物展示の手法などの取材を続けている。著書に『動物園を楽しむ99の謎』(二見書房)、『ASAHIYAMA―旭山動物園物語』(画・本庄敬 角川グループパブリッシング)、『ひめちゃんとふたりのおかあさん』(フレーベル館)、『約束しよう、キリンのリンリン』(フレーベル館)、『動物園のひみつ 展示の工夫から飼育員の仕事まで』(PHP研究所)など。動物園に関するガイドや講演も多数。