軽減税率導入に際して必要になってくるのは、「外食」の定義の修正だろう。現在のガイドラインでは
(1)テーブル、いす、カウンター等の飲食に用いられる設備のある場所で行う
(2)飲食料品を飲食させるサービス
となっている。これを、「飲食に用いられる設備のある場所で、店員が盛り付け作業を行い、給仕するサービス」と定義し直せば、イートインスペースのある小売業でも一物二税ではなくなり、店舗も客も混乱することがなくなるのではないだろうか。
これは一見、中食を扱うコンビニやスーパーが有利になるように思えるが、必然的に外食産業はテイクアウトを強化することになり、マーケットは活性化するだろう。食事のアウトソーシング化が進み、ビジネスパーソンの家事負担も軽減される。
「8%で買った人が飲食している」苦情が出かねない
今回の線引きでは、レジでの購入時に「店内では食べない」と言った客が、実際にはイートインスペースで飲食をするケースが発生するだろう。
客の側も気を使う。イートインを気軽に使えなくなるせいで、購入したものを店外で飲食する客も出るはずだ。わざとではないにせよ、事情が変わって店内で食べることにした場合、「10%で払っていない」という引け目を感じながら食事をするのは楽しくない。居合わせた別の客が「持ち帰ると言ったのに店内で飲食をしている人がいる」と店員にクレームをつけてくる可能性もある。
注意をするかどうかは店員に委ねられるのだろうが、慌ただしい業務の中で、購入した客が店内で食べていないか目を光らせるのは現実的ではない。逐一そうした対応が必要になれば、いよいよコンビニのレジ業務は破綻に近づくだろう。面倒な仕事を嫌って、働き手が集まらなくなることも予想される。筆者も軽減税率導入後にまた店頭に立つ機会を持ち、実際にどのような結果を迎えたのかを経験しようと思っている。
流通アナリスト・コンビニ評論家
1967年、静岡県生まれ。東洋大学法学部卒業。ローソンに22年間勤務し、店長やバイヤーを経験。現在はTBCグループで商品営業開発に携わりながら、流通分野の専門家として活動している。『ホンマでっか!? TV』(フジテレビ)レギュラーほか、ニュース番組・ワイドショー・新聞・週刊誌などのコメント、コンサルティング・講演などで幅広く活動中。