小学校の夏休み明け。もし校長先生が寝ぼけてパジャマで朝礼を始めたら、どう思うだろうか。きっと「夏休みボケを早く直さないと大変だ」というメッセージが鮮明に伝わるはずだ。CMディレクターの浜崎慎治氏は「短い時間で印象を残すためには、『パジャマ姿の校長』といった強い記号が必要だ」という――。
※本稿は、浜崎慎治『共感スイッチ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
強い印象を残すCM、理由は「記号」にアリ
日野自動車の「ヒノノニトン」のCMは、おかげさまで子どもたちからも高い人気をいただいているようです。
ある日、特に僕の方から強制したわけでもないのに、小学校に通う娘が自宅で「トントントントン、ヒノノニトン」と口ずさんでいたことがありました。話を聞けば学校でも友達同士でたまにやっていたそう。あのCMのインパクトはそれくらいに強かった、ということなのでしょう。
ここで「ヒノノニトン」のCMが、なぜそこまで強い印象をお茶の間に残せたのか考えてみたいと思います。
「出演している役者さんがよかった」
「ダジャレがよかった」
「シリーズとして継続しているのがよかった」
などなど、理由はいくつかあるように思います。ただし「子どもに人気」という意味では、CMに登場する「言葉」や「リズム」、つまり「記号」が重要だったように感じています。
なお、聞いた瞬間、その場に理解をもたらす何らかの強さを持つもの。それこそが僕の言う「記号」です。
「最近どんなCMを作ったの?」
「トントントントンっていう……」
「あれか!」
強い「記号」はそれだけで多くのことを相手に伝えてくれます。そして同時に、そこでの過剰な説明は不要となるのです。
今回の記事の冒頭が典型ですが、僕が自己紹介や仕事の説明をする際、最初に「au三太郎」「トライさん」という強い「記号」を示すと、そこからはみなさん、スムーズに理解を示してくれるようになります。