英独仏など欧州では「軽減税率」を実施している

2019年10月、政府は消費税率を現行の8%から10%に引き上げる予定だ。それに合わせて政府は、低所得者への配慮から酒類と外食を除く飲食料品と、定期購読契約が締結され週2回以上発行される新聞を対象に消費税の税率を低く抑える“軽減税率制度”を導入する予定という。

軽減税率の導入に関しては、経済の専門家の間でも賛否の意見は分かれる。賛成派は、軽減税率には消費税の逆進性を緩和するため、相応の正当性があるとみる。一方、反対派は、軽減税率を導入すると企業の経理事務の負担が増し、混乱が生じると指摘する。

大手コンビニエンスストアのイートインコーナー。イートインは軽減税率の対象外だが、「飲食禁止」の休憩設備として運用する動きもある。(写真=時事通信フォト)

ただ、冷静に考えると、生活必需品を中心に軽減税率を導入することは、英独仏など欧州では実施されている。軽減税率には、人々に選択の余地を与えつつ、ぜいたくをするゆとりのある人からより多くの税金を徴収する効果があるとみている。

軽減税率の潜在的なベネフィットを確認する意義は小さくはないだろう。重要なポイントは、消費税を負担する側・徴収する側のコンセンサスを作ることだ。国民が納得しない制度では、本来の政策意図を実現することは難しい。

低所得者の税の負担感はより大きくなる

軽減税率導入の議論で気になる点は、導入理由をおさえているかどうかだ。財務省は軽減税率導入の理由を、消費税率引き上げによる低所得者への影響を軽減することとしている。

消費税は、子供から高齢者まで社会全体で必要な財源を広く浅く均一に負担する間接税の一種だ。富裕層でも、そうでない階層でも、負担する税率は同じだ。

そのため、消費税には「逆進性」がある。食料品などの生活必需品の例を考えると、消費税率の引き上げで特定の食料品に掛かる消費税は一定額上がる。結果として、所得に関係なく一定の税負担は増える。そうなると、低所得者の税の負担感はより大きくなることが想定される。それを消費税の逆進性という。

この問題を解消するためには、生活必需品などを中心に税率を抑えることが解決策の一つになる。相対的に所得の少ない人が感じる負担を軽減することができる。それは、消費税率の引き上げに伴う需要の反動減を緩和し、経済成長の下振れリスクを抑えることにつながることも期待できる。