大塚家具は、大塚勝久前社長が1969年に設立し、高級家具店としてのブランドを確立。93年に会員制を導入し、ニーズに適する商品を推奨販売するスタイルをとってきた。ところが、15年1月に社長に復帰した久美子氏は会員制を廃止。商品構成を中価格帯にまで拡充する販売戦略を打ち出した。
狙い通り来店客数は増加したが、肝心の成約率は大幅にダウン。従来のメイン客である富裕層の支持までも失った。親子間の争いが、高級家具店のブランドを毀損した側面も見逃せない。
「顧客数は限定的な市場とはいえ、優位性があったのは、高級家具を目利きして仕入れる能力と顧客の背中を押して購入のクロージングにもっていく接客術。現状は、この2つの強みを放棄した格好です」(鈴木氏)
品質管理を徹底、信頼度がアップ
独自に培ってきた優位性のある高級家具市場に加え中価格帯もマーケットにするビジネスモデルは、コスト構造を引き下げることが必須の条件となる。
大和証券エクイティ調査部シニアアナリストの川原潤氏は、「一般的に考えても安い価格で売るにはコスト構造を下げるか、もしくは売り上げを大幅に伸ばさない限り営業利益は上がりません」と指摘し、こう続ける。
「家具のマーケットが大きく伸びることはありません。価格を下げるには、コスト構造をそれなりに合わせないと営業利益率が圧迫されるのは自明の理です。その点、ニトリが効率の高いコスト構造になったのは何年にもわたり努力してきた結果です」
ニトリは、現会長の似鳥昭雄氏が67年の創業当初からチェーンストア経営を志向し、店舗網を全国に拡大してきた。
「海外生産、自社規格の採用など、次々に新機軸を打ち出し、企画、生産、物流、販売を一貫して手掛けてきました。サプライヤーと協力してSPA(製造小売)型のビジネスモデルで、あらゆる過程で徹底したコストダウンをはかってきました。家具からインテリア、生活雑貨へと商品ラインアップを広げることで来店客が増え、売上増につながっています」(川原氏)
さらに川原氏はニトリの高成長に拍車をかけた背景に「“品質の神様”といわれた元広州ホンダ社長の杉山清氏をスカウトして品質管理の徹底に努め、消費者の信頼度をアップさせたことがあります」と指摘する。