統計分析を用いた歴史もあります。人口統計学なんかで解釈すると、ああ、確かに世界史の流れがみえてくるなと、とても感心させられることがあります。この場合、もちろん主役は人なんですが、なんというか、人というより数字です。私は本業が作家だからなんでしょうか、やっぱり満足できないんですね。

結局のところ、歴史は歴史でやるしかない。つまり、誰がどうした、このときああしたというような、人間の事績ですね。経済、文化、宗教、政治、戦争にわたる混沌たる人間活動、それを追いかけることから、世界史の流れを読み取っていく。

ここで最初に戻りますね。それが難しいと。世界史なものだから、いくつも流れがあると。世界は広いものだから、ひとつの流れにはならないと。

「ユニヴァーサル・ヒストリー」で歴史を見る

世界史を例えば英語に訳せというと、大半の人は「ワールド・ヒストリー」と訳すと思います。間違いではありません。世界史はワールド・ヒストリーです。けれど、ワールドといってしまうから、ワールドを洩れなく取りこもうとする憾みはありますね。その結果が沢山の歴史を並列する世界史になっているわけです。

しかし、です。英語で世界史という場合、もうひとつ「ユニヴァーサル・ヒストリー」と訳すこともできるんですね。「ユニヴァーサル」という言葉ですが、辞書を引くと「世界的」という意味の他にも、「普遍的」とか、「宇宙的」とかの意味も出てきます。「ユニヴァーサル・ヒストリー」というと、むしろ「普遍史」と訳されるほうが一般的でしょうか。

ここで考えたいのは「ユニヴァーサル」、これは形容詞ですから、あるいは名詞の「ユニヴァース」のほうが適当かもしれませんが、この言葉のもともとの意味なんですね。

元がラテン語の「ウニウェルススuniversus」です。これを分解してみますと、まず「ウニuni」の部分ですね。原型は「ウヌスunus」、イタリア語やスペイン語では「ウノuno」、フランス語では「アンun」(全て男性名詞)になる通り、いずれも意味は「一」です。後半の「ウェルススversus」ですが、これは「向かうverso」という動詞から派生していて、名詞で取れば「方向」、形容詞で取れば「向けられた」ということになります。合わせた「ウニウェルスス」は「一つの方向」とか、「一つに向けられた」とかの意ですね。

ユニヴァーサル・ヒストリーは「一方向の歴史」、もしくは「一つに向けられている歴史」ということになります。