同じように、火山活動の資料も使えます。火山が大規模な噴火を起こすと、大気中にエアロゾルが充満して、太陽の光が地表に届かなくなって、寒くなるんですね。それで、やっぱり飢饉、暴動、政変と誘発する。1789年にフランス革命が起きたのは、1783年にアイスランドのラキ火山が大噴火を起こしたからだ、なんて説もあります。

こうした手法からなら、世界史の流れを読み取ることも可能ですね。しかし、なんだか淋しい。これだと主役は自然であって、人間が脇役という感じです。

人間が主役の世界史はできないかと探すと、DNAの研究なんかも使えそうですね。今生きている人のDNAから、先祖がどこから来たのか明らかになる、通じて人間の移動や活動がみえてくるというわけです。例えば、アメリカ先住民ですね。アジアからベーリング海峡を渡って、アメリカ大陸に入った黄色人種とされてきましたが、どうも北欧系のDNAも入っているようだと。

いわゆるヴァイキングですね。活発な海洋活動で有名ですが、この人たちがコロンブスより遥か以前にアメリカに到達していて、アジアから渡ってきた人たちと混血したんじゃないかというんですね。DNAの調査が進めば、いたるところで歴史が書き替えられてしまう気もしますが、さておき、これもどうでしょうか。

確かに人間が主役ですし、人間の世界史も描けるのかもしれませんが、人間というより動物、霊長類ヒト科ホモ・サピエンスの世界史ですね。実際のところ、目下のDNA研究の主軸は、クロマニョン人とかネアンデルタール人のほうですしね。

茶、砂糖、金……、「○×の世界史」で事足りるのか?

やっぱり、王道の歴史で行きます。

比較的やりやすいのが、経済史ですね。古くはマルクスの『資本論』ですが、これを歴史というには、あまりに観念的ですか。それでも経済、交易とか流通ですね、その変遷から世界史を叙述するという方法は可能です。経済活動というのは国境を越える、国境どころか大陸を渡り、海を越えることが、ままあるわけです。

香辛料とか茶とか砂糖とか、あるいは金とか銀とか通貨とか、「○×の世界史」というのは、よくありますね。これ、とても面白いんですが、なんというか、主役は微妙に人じゃないんですね。物だったり、システムだったりして、やはり少し物足りない。