進む市民公園の「政治化」

武漢市内では2015年に入り、こうした市民公園の「政治化」が続々と進んでいた。

例えば1950年代に市内に開設された紫陽湖公園は「愛国主義」を、同じく洪山公園は習政権のスローガン「法治」をテーマにリニューアルされた。実際に敷地内を散策してみると党のイデオロギーを宣伝する看板が乱立しており、毛沢東の標語がどこにでも貼り付けられていた1960年代の文化大革命を連想せぬでもない。

これらの公園には、「税金の無駄遣い」「市民の生活空間にプロパガンダを持ち込むな」と苦言を呈するネットの声もある。だが、現地当局は批判もどこ吹く風だ。地元紙『長江日報』は当時、武漢市内では他にも「中国夢」「中華優秀伝統文化」などを主題にした公園9か所の新規開設や改装の計画が進んでいると報じていた。

小学校には巨大な宣伝看板

共産党公園の登場は(この取材時点では)武漢市に特有だったとはいえ、こうした庶民の日常の「政治化」は習近平政権下の中国全土で進行中である。

「近所の小学校に、突然2m大の巨大な宣伝看板が複数現れました。習近平が子どもに囲まれて右手を挙げた、往年の毛沢東を連想する構図です」

当時、北京に在住していた中国法律研究者の高橋孝治はそう話す。看板は習近平が党のトップに立った3カ月後(2013年2月)に突如登場した。

「現政権下では市内の宣伝看板も増えました。ただ、教育施設や公園など、子どもや若者が多く利用する施設で特に重点的に、イデオロギーの注入が進められている印象です」

これらの政治宣伝は、いずれも習近平に対する個人崇拝や、党のイデオロギーを強く前面に押し出す点が特徴だ。国家を疲弊させた毛沢東体制の終結から約40年間、中国で長年のタブーとされてきた政治手法が、21世紀になって復活したのである。