親が話を聞いてあげると、学力もあがる

実は、この柳沢校長の「2:1の原則」は科学的にも裏付けられている。

東北大学加齢医学研究所所長の川島隆太教授が仙台市に住む合計7万人の小中高生を2010年から7年にわたって追跡調査(『学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト』)した結果を解析すると、「家の人にしっかり話を聞いてもらった」と答えた子は、学力が上がるということが明らかになった。膨大なデータが強い因果関係を示しているのだ(参照記事:"ながらスマホ"で子の芽を摘む気の毒な親)。

なぜ、親に聞いてもらうと学力が上がるのか。

「(親に受け止めてもらうことで)親子の愛着関係が高まり、子供の精神状態が安定。こうした親子関係にある子供は、家で安心して暮らしているから、落ち着いて勉強に取り組める」というのが川島教授の見解だ。

読解力の高さと学力の高さは非常に強い相関関係

これに加えて、話を聞いてもらって「読解力」が伸びたことにより、学力が向上した可能性が高い。

読解力はすべての教科の土台となる力だ。算数や社会、理科は、正しい知識を持っていても、問題文を正しく理解する読解力がないと正解を導き出せない。実際、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』によると、読解力の高さと学力の高さは非常に強い相関関係にあったという。

私立のトップ校である開成学園の入試問題では、国語はもちろん、すべての教科でかなり長い文章を読んで、問題を解かせている。

「制限時間内に長い文章を読んで、それがパラグラフごとにどのような相互関係になっているか理解できないと解けない問題です。長文の内容が理解できたか、できなかったかが第一関門になっています」(開成校長)

こうした力の土台が、子供の話を聞くということなのだ。「じっくり子供の話に耳を傾ける」ただそれだけでいい。5W1Hをひとつずつ質問して、子供から話を引き出せば、自ずと2:1の原則は満たされる。ただ、柳沢校長は、親が聞く時に「5W1Hがわからない」と厳しく子供に指摘するのは避けてほしいという。話すと親がお説教してくると思ったら、子供はもう二度と話したくないと口をつぐんでしまうからだ。

※『プレジデントFamily2018秋号』の特集「東大生192人 頭のいい子の本棚」では、開成中学・高校の柳沢幸雄校長のインタビューのほか、「現役東大生自身の小学生時代の読書習慣と小学生に薦める本」「国語・算数・理科・社会・英語 5教科が大得意になる本」「筑附小、慶應横浜初等部、桜蔭中・高、筑駒中・高など名門校の図書館で読まれている本リスト」などを紹介しています。本選びの参考に、ぜひ手に取ってご覧ください。

 
柳沢幸雄(やなぎさわ・ゆきお)
開成中学校・高等学校校長
東京大学卒業後、システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)に入社。74年に退社後、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。ハーバード大学大学院准教授、同併任教授、東京大学大学院教授を経て、2011年より母校である開成中学校・高等学校の校長を務める。
(写真=iStock.com)
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