「会社」「上司」と合う合わないを可視化する

【田原】日本の企業は入社3年以内に31.9%の人が辞めてしまう。どうしてミスマッチが起きるのですか?

【表】若いときから自分のキャリアや将来のことを考えてないからではないでしょうか。

田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。本連載を収録した『起業家のように考える。』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。

【田原】僕もそこが問題だと思う。早稲田大学で授業を持っていたけど、大学生は自分が何をしたいのかを考えていなくて、就活は給料がいいか、残業は少ないかといった話ばかり。どうして好き嫌いの話をしないんだろうと思いました。

【表】いや、好き嫌いは持っているんです。でも、それをじっくり考えたり、言葉にして発表する場がない。欧米だと、中高生あたりからキャリアについてロジックをつくって考えて、プレゼンする機会があります。日本もそういう場をつくったほうがいいでしょう。

【田原】宮沢喜一さんが、「日本の政治家はサミットやG7でほとんど発言しない。英語のせいではない。日本の学校では正解のある問題しか教えない。サミットやG7に正解はないから、何も言えないんだ」と言っていました。キャリアもきっと正解がないから、考えられないのかもしれない。

【表】そうですね。自分のやりたいことについて説明できるに越したことはないですが、最後は好き嫌いなのだから、説明しきれなくてもいい。人と比べるのではなく、「自分はこれが好きだ」と自信を持って言えれば十分かと。幸い、好きなことを突き詰めてやっている人が活躍するようになって、「好きなことをやる」と言える社会に変わりつつあります。

【田原】企業の側はミスマッチをどうやって防ごうとしているのですか。

【表】いまのところは人で対応しています。面接官やリクルーターが自分たちの会社について一生懸命話して、逆に応募者からも話を聞いている。ただ、大企業の採用面接はせいぜい1回30分を2~3回で、見抜くのはなかなか難しい。

【田原】合わない人を採用しても、経営者がうまくやれば社員は頑張って働いてくれるんじゃないですか。僕は松下幸之助さんと10回以上お会いしたけど、「合う人間も合わない人間もうまくいく」とおっしゃっていました。

【表】たしかに経営者によってはできると思います。ただ、そういうことが無意識にできるのは天才的な経営者だけ。普通の経営者や人事部長、それに現場のマネジャーは、合わない人をどうしようかとすごく悩まれている。たとえば異動させたらうまくいくかもしれませんが、そういうことを考えて試すこと自体がコストであり、コストはできるだけ少ないほうがいい。私たちは、データを使ったアプローチならそのコストを軽減できると考えて、16年2月から「mitsucari適性検査(以下、mitsucari)」というサービスを提供しています。

【田原】mitsucariは、どんなサービスですか。

【表】一言でいうと、カルチャーフィットを調べるサービスです。モルガン・スタンレーを辞めた彼もスキルは会社とフィットしていましたが、カルチャーがミスマッチで辞めていきました。そこで会社や個人のスキル以外の特性のマッチ度を測定して、採用の参考にしてもらいます。