けっして押しつけたり強制したりしない。子どもたちの知的な興味を引き出し、自発的にプログラミングを学びたい、と思わせたらしめたものだ。

「宿題」よりも身体を使って思い切り「遊ぶ」こと

私のフリースクールでも、その道のプロフェッショナルに指導を依頼しているのだが、親御さんから「もっと宿題を出してください」と言われることもある。そのときに私は、「いえいえ、そんな暇があったら、もっと外で遊ばせたほうがいいですよ」と話している。

『知識ゼロのパパ・ママでも大丈夫! 「プログラミングができる子」の育て方』(竹内 薫著・日本実業出版社刊)

みなさんはネコの親子が何気ない遊びの中でじゃれているのを見たことがあるだろう。ネコ科の動物は、こうした遊びのなかで狩りの方法を学んでいる。野生の世界で生きるライオンやトラは狩りをして生きていくしかない。しかし、子どもがいきなり本番の狩りをしようとしても、捕食される動物も必死で逃げるから失敗してしまう。そこで親ライオンは、子どものうちから、遊ばせながら狩りの方法を、すなわち「サバイバルの技術」を教えているのだ。

遊びながら学ぶことが重要なのは、人間も同じだ。

私が小学校のころを振り返ってみると、同級生には「ガリ勉くん」が大勢いた。みんなが遊んでいるのに、その子たちは親に遊ばせてもらえず勉強ばかりさせられていた。もちろん、そのような子たちは成績も優秀だった。しかし、それは小学校のときだけで、中学校に入ってしばらく経つと、成績がどんどん落ちてしまった。

それはなぜか。私は、「身体性」の獲得に失敗したからだと考えている。

実は、勉強する力や勉強の成果は、身体性があってこそ伸びるものだ。そして、遊びには、身体性がつきものである。屋外での遊びはもちろん、将棋や囲碁のような室内ゲームでさえ、駒を動かす、碁石を打つという身体性を伴っている。

つまり、子どもが小さい時期にやらなければならないのは、「遊ばずに勉強すること」ではなく、「遊んで身体性の器を大きくすること」なのだ。

小学校までに身体性の器を大きくできた子どもたちが、中学生になって本気で勉強をはじめたとき、本当の意味での学力を身につけることができる。なぜなら、彼らは勉強を楽しむ「遊び心」を身につけているからだ。

東ロボくんの東大合格断念から学ぶこと

身体性の重要性を裏づけるのが、「東ロボくん」の存在だ。

東ロボくんとは、日本の国立情報学研究所が中心となって、2011年から2016年にかけておこなわれた、「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトで研究・開発が進められた人工知能(AI)だ。