相手の長所をフォーカスする練習を積む

ストレスで最も多いのは、人間関係に関するものではないでしょうか。特に上下関係が厳しくウエットな日本の組織では、威圧的な上司と、言いたいことが言えない部下の間で、いまだにミスコミュニケーションが起こりがちです。

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ヒトなど霊長類には「ミラーニューロン」という神経細胞があります。他者の行為をあたかも自分の行為であるかのように脳が捉え、共感能力に発展させる能力です。

先ほど「メタ認知」を鍛えることで、自分自身を理解できると述べましたが、それを発展させることで、他者への理解力はかなり進みます。大切なのは、相手のいい面を探すということです。

そもそも自分も含めて、100点満点の人間など存在しません。短所と長所は常に表裏一体で、あなたが苦手と思うその人の欠点は、反転すれば長所に転じることもあるのです。「しつこい」人は「粘り強い」人でもあり、「ヘラヘラ軽い」人は「周囲への気配り」をしているのかもしれません。「口うるさい」人は「努力家」の表れなのではないでしょうか。相手の長所をフォーカスする練習を積んでから、僕は「苦手なタイプ」がほとんどなくなりました。

「ストレス=悪いこと」という考え方を変える

もう1つ気をつける点、それは他者をジャッジしないということです。例えば、どう考えても思考が明晰でない上司、やり方が強引すぎる同僚、何度仕事を教えても覚えない部下に対して、「あいつはアホだ」「強引すぎる」「君はバカか」というのは、あなたの勝手な価値判断(ジャッジ)です。

せいぜいあなたが言っていいことは、「私には理解できないところがあるのですが」「そのやり方は力強いけれど、僕には無理だ」「どこがわからないのか、教えてくれるかな」といった自分の疑問や率直な思いだけです。相手の人格ではなく、行為に関してのみ言及する、これは人間関係を円滑に行ううえでの大前提です。

ストレス=悪いことと思いがちですが、実はこれを味方につけることで、高パフォーマンスを引き出すことができることをご存じですか。

ストレスを感じると脳内でノルアドレナリンが放出され、副腎髄質からはアドレナリンが分泌されます。イライラや不安感が強すぎるとうつ状態や、トラウマなど深刻化する場合もありますが、うまくアドレナリンを活用することで、仕事や勉強に活かすこともできます。その好例が「タイム・プレッシャー」です。