進次郎氏を育てたのはどっちだ
安倍氏は進次郎を政務官、党農林部会長、筆頭副幹事長など重要なポストに充て、英才教育を施してきた。同じ神奈川県選出の菅義偉官房長官が進次郎氏の後見人となっている。安倍氏側は、こんな話を紹介しながら、進次郎氏との関係の深さを強調する。
こういった情報は、安倍氏を支援する議員から意図的に流されるのはもちろんだが、最近は安倍政権に近いことで有名な政治評論家・田崎史郎氏らも加わり、テレビなどでも盛んに「進次郎氏は安倍氏支持」と予測。流れをつくろうとしているようにみえる。
安倍氏側の攻勢に、石破氏も負けてはいない。進次郎を「自民党が下野したときに初当選した。この時に当選した人たちは、党や政治のあり方にきちんとした考えを持っている人だ」と持ち上げる。野党で苦しんだ時代、党政調会長などを歴任した自分が、初当選の進次郎氏を育てたという含意もある。また「進次郎世代」を「きちんとした考えを持っている人」とほめるのは、進次郎氏とともに当選を重ねている4回生には今・農水相を務める斎藤健氏ら、石破氏に近い議員が少なからず混じっていることも計算に入っているようだ。
この論争は「ここまで立派に育てたのは誰だ」と、育ての親争いをしているようで、滑稽ですらある。
父親との「近さ」まで争う展開に
進次郎氏と言えば、すぐに思い浮かぶのは父・純一郎元首相。純一郎氏は最近、原発政策などを巡り安倍氏を痛烈に批判してきており、そのことが「進次郎氏は安倍氏側にはつかない」根拠の一つとなっていた。これについて安倍氏側は、「安倍氏と純一郎氏は8月15日、森喜朗元首相、麻生太郎元首相らとともに久しぶりに会食した。とてもいい雰囲気の会合で、純一郎氏から安倍氏に対する批判的発言はなかった」と「雪解け」を演出している。
石破氏は若手議員時代、選挙制度改革を巡って純一郎氏と大論争をしたことや、2001年に純一郎氏が勝った総裁選で石破氏は対立候補の橋本龍太郎氏を熱心に推したことを紹介。その上で「そんな私を(純一郎氏が)防衛庁長官に指名した。国のためになるなら使うのが当然だ」と純一郎氏の度量の大きさに敬意を表している。若手議員たちに「石破氏を推したら次の人事で干す」とささやいて締めつけている安倍氏サイドへの皮肉でもある。