おいしいカレーを求めて、毎日何皿も食べるカレーマニアたち。彼らがいま注目する店の多くは、バーや喫茶店の営業時間外にSNSなどで集客する「間借り」の店だという。食の雑誌「dancyu」(9月号)では、そうした新しいカレーカルチャーを取材した。「店主の多くは本業を持ちながら、オリジナルのカレー作りに邁進している。修行したことがない人もいる」。そうした実態について、編集担当者が興奮気味にレポートする――。

最先端の「カレー」シーンを牽引するのはSNSだった

記録的な暑さだった2018年夏は、カレー界にとってもメモリアルな年でした。

本格シーズン到来直前の5月には、「レトルトカレーが初めて固形ルウを売上高で抜いた」というニュースが全国紙に踊り、新時代の到来を予見。実際、「dancyu」(9月号)のカレー特集の取材では、カレーそのものも、カレーの食べられ方も、ずいぶん変わったものだと感慨深く思うことが多々ありました。

「dancyu」(9月号)特集は「スパイスカレー 新・国民食宣言」。撮影=三木麻奈

シーンを牽引するのはSNSです。

一年で数百から千ものカレーを食べ歩くカレーマニアたちが、各種SNSに日々の釣果をアップ。タイムラインを黄色く染め上げながら、目まぐるしく変わるカレーの最前線を更新していきます。さらに、カレーのつくり手もSNSを巧みに使いこなし、時に互いにつながりながら、次世代のカレーカルチャーを生み出していく――。そんなかつてないスパイラルができ上がっています。

新しいカレーはどこに行くのか、SNSの動きとともに未来予想図を考えてみました。

「dancyu」(9月号)より。「TOKYO インディーズカレーの夜明け」(マジョラムカレーほか) 撮影=相澤心也

“インスタ映え”する個性的な味わいのカレー

「なにこれ、かわいすぎる!」。その写真を一目見ただけで、編集部の誰もが黄色い歓声をあげたのは、都内某所「マジョラムカレー」の一皿。

星型のにんじんとさくらんぼがちょこんと乗せられたライスの小山、色とりどりのカレーや副菜がお花畑のように皿を埋め尽くし、その世界観はまるでキキララ! 「花より団子」が社訓ならぬ部訓のdancyu編集部ですが、ここまでドーパミン全開にかわいさを追求したビジュアルには、不覚にも完全にノックアウトされました。

「見た目から味はどうかなって思ったんですが、お見それいたしましたと心の中で土下座するくらいおいしかったんですよ」

とは試食(下取材)から戻った担当編集者の弁。若き女性店主は、京都のおばんざいをベースにスパイスを組み合わせ、独自のファンタジーなカレー世界を構築。こんなにかわいくって、京都のおばんざいがベース……。脳内が混乱しつつ、時代はここまで来たかと不思議な感動を覚えたのでした。

いわゆる“インスタ映え”のビジュアル。そして、自分自身の食のバックグラウンドにスパイスを掛け合わせた個性的な味わい。SNSの出現で、カレー界に起きた変革といえば、何よりこの2つかと思います。