「クロちゃん」のカレーが超人気になった理由

東京世田谷区・千歳船橋「カルパシ」の、クロちゃんこと黒澤功一さんはその筆頭です。

2015年に浅草の日本酒バーを間借りして営業をスタート、瞬く間に行列の絶えない大人気店となり、早くもその翌年には自身の店をオープン。新しい店は、その年の各誌グルメ欄を席巻し、今では最も予約の取れない一軒となりました。

「dancyu」(9月号)より。「クロちゃんは咖喱の夢を見る」 撮影=齋藤圭吾

この「カルパシ」は、カレーの未来の一角を示唆しているかと思います。

まず、その味わい。

カルパシが斬新だったのは、週替わりメニューで、インド亜大陸の現地の味わいを日本の旬の素材と掛け合わせたこと。例えば、今年の夏には「鱧のパコラと香味野菜のラッサム」「青実山椒と豆腐のラムキーマカレー」が供されました。シャープなスパイスの刺激と、新鮮な日本の旬の融合した見事なカレーでした。

日本のカレー店で修行経験などを持たない黒澤さんは、ユーチューブの現地レシピ動画を大いに参考にしたそうです。他にも、ユーチューブを見ていますというカレー店主が何人もいらっしゃいました。驚いたことに、こんな形でもSNSの影響があるのですね。

次に、営業スタイル。

カルパシは、恐らく日本初の完全予約制カレー店です。浅草の間借り時代にお客さんを断ることも多かったことから、独立を期に完全予約制にシフト。毎週日曜日の夜にSNSでメニューをアップし、さらに同日22時よりLINEで予約をとります。

「ワンオペ」で店を切り盛りするカレー店主たち

ワンオペで店を切り盛りするカレー店主には、間借りか独立店かを問わず、電話を持たない店が増えています。メニューやカレンダーなどの店情報もSNSなら、予約や問い合わせもSNSがデフォルトになりつつあるようです。

急に時計の針が回り始めたカレーの世界。今はルウからスパイスへの移行期でもあり、これまでの常識が変革しつつある過渡期なのだと思います。この先は昔ながらのカレーライスへと揺り戻しがあったりしつつ、弁証法的に(?)進化を遂げるのでは。

みんなにとって身近な日々の糧であり、日常の小さな幸せであり、一皿で完結するカレーは、どうやらSNSと相性抜群の模様。全員参加型のツールの登場で、新しいカレーライフがもっと楽しくなりますように!

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