一方で民間企業も、青函トンネル、黒部ダム、本州四国連絡橋といった数多くの国家プロジェクトを通じて実績を重ね、特殊架構技術や高度施工技術を蓄積・会得していった。そして財政縮小やプロジェクトの民間移行が行われるなか、官庁をはじめとする大型インフラの発注者には、最新知識を保有し、制度設計や許認可権限の履行に長けたエリートは存在し続けたが、専門技術知識を有する多様な技術集団は失われていった。

にもかかわらず、民間企業が有する最新技術のサポートを前提としたリニア中央新幹線などの大型プロジェクトにおいて、官庁/発注者は会計制度上の設計施工分離を今なお前提とし、制度改革のフォローもないまま、設計図書(編集部注:図面や仕様書など、建築物の施工に必要な書類の総称)の作成まで、明治以来の自前主義を通さなければならないのである。

明治以来、日本の急速な近代化のために構築されたこの百年の方式には、公正・透明性を原則とするコンプライアンスが問われる今日、綻びが生じている。グローバル化が進み、コンプライアンスが組織・企業活動の基本となり、優れた先端技術や研究開発能力が民間企業に移った今日、発注上の性能要求を越えて技術検討や仕様決定にまで踏み込む官庁指導型のプロジェクト運営は、機能不全に陥っている。

発注システムの変革で数千億円のコストダウンが可能に

冒頭に挙げたリニア中央新幹線における「談合」問題は、発注の工夫があれば解決できるはずである。例えば、リニアプロジェクトの計画意義・目的、概略立地調査、路線ルート・駅舎立地検討書の作成等、中央・地方自治体を巻き込んだ問題整理は発注者が行う。そして発注者が作成した資料を基に、詳細な地盤・地質調査、技術検討、予算書作成の多くは、ゼネコンが自らの専門知識を活用し作成する。

工区ごとの詳細調査、技術検討、予算書作成は、技術力を有する民間企業同士で技術競争入札を行う。この入札で決定した企業は、担当工区の技術提案・予算書の守秘義務を負わせたうえで、この工区の「工事入札」には参加できないこととし、他の工区での工事入札競争に参加させるようにする。