大型インフラ整備プロジェクトの企画・調査・検討には、十数年を要する場合もあるだろう。計画路線の地盤・地質などの精度の高い調査、地下水対策を伴うトンネル工事の計画には数年を要し、設計図書の作成にも数年を要する。様々な資料をベースとした設計図書の作成を、発注者がすべて自前で行うことはできない。その間、民間企業が調査・技術検討・設計といった業務を遂行するにあたり、人材確保をはじめ多くの経費が発生するのは当然である。
真に公平な「競争入札」を実現するには
こうした前提のもとに、真に公平な競争入札を成立させるためには、数兆円におよぶ巨大建設プロジェクトの1%、数百億円を、発注者がソフトフィーとして準備することが必要だろう。たとえば総額9兆円のプロジェクトのうち4兆円が建設工事の予定予算とすれば、その1%の400億円をソフトフィーにあてるということだ。
たとえば全体を10の工区に分けて民間企業を対象に技術提案コンペを実施し、コンペの勝者に実施計画資料の作成を発注する。こうすると、1工区あたり40億円の作成費(ソフトフィー)を支払うことが可能となる。実地計画資料が完成したら、それを設計図書として公表し、工事部分についてきちんと競争入札を実施する。1工区あたりの工事予算が4兆÷10工区=4000億円として、競争原理が働いて予定予算より10%安値で落札されれば、1工区あたり400億円、工事費が安くなる。
総額400億円のソフトフィーを使って、工事費の総額が4000億円下げられれば、差し引き3600億円ものコストセーブが可能となる計算だ。実際にはこれほど単純にはいかないかもしれないが、数千億単位のコストセーブの可能性が少し見えてくる。
余談だが、東京中央卸売市場の地下汚染水問題も、技術提案と工事入札が別々に行われていれば生じない問題だったと思われる。工事業者は手を抜いたわけではなく、設計図書に忠実に工事を履行した。
都は汚染水の処理を含む「使う側」「利用する側」の要求性能を明確に規定したうえで、建設業者の技術提案コンペを行い、しかる後に本体工事の競争入札を行うべきであった。都に中央卸売市場の運営ノウハウはあっても、築地中央市場建設から数十年も経った今となっては、建設ノウハウはないだろう。