「負債」と「純資産」の違いを正しく言えるか

この貸借対照表を理解する上で最も大切なことが、表の右側の「負債」と「純資産」の違いを知ることです。これはとても大事です。

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多くの人は「『純資産』は自社のお金で、『負債』は人から借りたお金」と答えます。しかし、この答えでは50点しかあげられません。もし、経営者がこういうふうに覚えていたら、会社をつぶしかねません、

「負債」は将来のある時点で必ず返済しなければならない資金の調達源です。「負債」を返せなければ、倒産に直結します。一方、「純資産」は株主から預かっているものなのですが、会社を解散するなどしない限り返済の義務のない資金の調達源です。

「50点しかあげられない」と言った理由は、純資産を「自社のお金」と答えたからです。「純資産」は法律的には「株主のもの」なのです。そして、「純資産」の比率が高ければ高いほど、会社の中長期的な安定度は高まると言えます。

以上の規則を理解できれば、貸借対照表の第一段階はクリアです。損益計算書やキャッシュフロー計算書は、肌感覚に近いので、これらはより簡単なルールさえ知れば、貸借対照表より楽に読めます。ここが経済との大きな違いです。

「作り方」ではなく「読み方」を学ぶ

多くのビジネスマンが会計を学ぶにあたってムダなことをしていると私が感じているのは、その規則を「財務諸表を作ること」を前提として学び始めることです。つまり「貸方、借方」という伝票の仕分けレベルのことを学ぼうとするので、本来はややこしくないことを、余計にややこしくしているのです。

一般のビジネスマンが、経理の仕分けを必要とすることも財務諸表を作成することもまずありません。その読み方の基本さえ分かればいいのです。

皆さんは、パソコンやスマホを使うと思いますが、パソコンやスマホの本体の作り方をほとんどの方は知らないと思います。私も知りません。しかし、使い方は知っているはずです。財務諸表も同じです。経理担当者でない限り「作り方」を勉強する必要はありません。その「読み方」を勉強すればいいのです。

私は先に話したように、以前、明治大学の会計大学院で特任教授として管理会計や財務諸表の読み方を教えていましたが、私自身では財務諸表を作れません。作る必要もなかったからと言えばそれまでですが、読むことに関しては自信があります。

会計大学院に来る学生たちは会計士を目指しており、少なくとも簿記2級程度以上の実力はあり、私より伝票レベルのことはよく知っています。しかし、残念ながら、実務レベルでの財務諸表の読み方は十分ではありませんでした。「作り方」と「読み方」は別のものだからです。