日本では空前のサバブームとなっている。「サバ缶が手に入らない」という声も聞かれるが、その事態はややこしい。日本は食用サバの5割をノルウェーから輸入している。その一方、水揚げしたサバの約半分を輸出している。輸出先の6割はアフリカだ。つまり日本は大きくて高価なサバを輸入し、小さくて安いサバを輸出しているのだ。輸出したサバはアフリカの貧しい人々のタンパク源になっている一方、日本の資源管理の遅れも批判されている。現状のままでいいのか――。

なぜ、空前のサバブームになっているのか?

世は、空前のサバブームだ。

「毎日のようにメディアから取材の問い合わせがきますし、一般の方からは『サバ缶が手に入らない』という苦情がきます」と語るのは、全日本さば連合会(以下、全さば連)の小林崇亮会長だ。

メディアが取り上げるサバブームの柱は2本。ひとつは年間生産量でツナ缶をサバ缶が抜いた、という話題だ。以前は生産量がツナ缶の半分ほどしかなかったサバ缶だが、2012年ごろからその数が拮抗し、2017年はツナ缶の生産量約3.4万トンに対し、サバ缶は約3.9万トンと増え続けている。

サバブームのもう一つの柱は、北は釧路の「北釧鯖」から、南は鹿児島県屋久島の「首折れサバ」まで、養殖サバを含め全国各地で盛り上がりを見せる「ご当地サバ」、いわゆるブランドサバである。

こうしたサバ関連のニュースは、報道番組はもちろん、『林修の今でしょ! 講座』(テレビ朝日系列)、『マツコの知らない世界』(TBS系列)などのバラエティ番組でも毎週のように取り上げられる。

前出「全さば連」はサバの生産者団体ではなく、2013年に発足したサバを食べるのが好きな人の集まり。全国各地のサバ料理やサバ缶を味わい、サバ食文化を語り、サバを通じて人々と交流を図るサバフリーク集団である。ゆえに、サバ缶の品薄を訴えられても対応はできない。小林会長も本業はデザイナーだ。

サバ好きが高じて、4年前から全国のサバの産地が一気にそろう「鯖サミット」を企画すると、毎回想定を超える人々が集まり、昨年の千葉県銚子開催では1日の入場者数は3万人にもなった(2018年は長崎県松浦市で10月27、28日開催予定)。

ここへきてメディアからの注目度が増しているが、このようにサバは数年前からじわじわと来ていたのだ。

10年前からサバの好調な水揚げが続く

なぜ、大衆魚の代表格であるサバがこれほどまでのブームになっているのか。何よりそのおいしさに加え、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれるなど体によいことがその背景にあるだろう。だがここでは、ちょっと違った角度からサバブームを眺めてみよう。

ブームの大前提にあるのが、多くの魚が不漁になるなか、ここ10年、日本国内でサバの安定した漁獲が続いていることだ。

サバは主にまき網漁で漁獲されるが、1970年代には100万トンを超える漁獲があったサバはだんだん数を減らし、90年代に入ると20万~30万トン台しか獲れない不漁年が度々おとずれるようになっていた。

ところが、10年ほど前から多少の波はあるものの増加傾向にあり、15年、16年は50万トン台超えと比較的好調な水揚げを記録している。