なぜ、空前のサバブームになっているのか?
世は、空前のサバブームだ。
「毎日のようにメディアから取材の問い合わせがきますし、一般の方からは『サバ缶が手に入らない』という苦情がきます」と語るのは、全日本さば連合会(以下、全さば連)の小林崇亮会長だ。
メディアが取り上げるサバブームの柱は2本。ひとつは年間生産量でツナ缶をサバ缶が抜いた、という話題だ。以前は生産量がツナ缶の半分ほどしかなかったサバ缶だが、2012年ごろからその数が拮抗し、2017年はツナ缶の生産量約3.4万トンに対し、サバ缶は約3.9万トンと増え続けている。
サバブームのもう一つの柱は、北は釧路の「北釧鯖」から、南は鹿児島県屋久島の「首折れサバ」まで、養殖サバを含め全国各地で盛り上がりを見せる「ご当地サバ」、いわゆるブランドサバである。
こうしたサバ関連のニュースは、報道番組はもちろん、『林修の今でしょ! 講座』(テレビ朝日系列)、『マツコの知らない世界』(TBS系列)などのバラエティ番組でも毎週のように取り上げられる。
前出「全さば連」はサバの生産者団体ではなく、2013年に発足したサバを食べるのが好きな人の集まり。全国各地のサバ料理やサバ缶を味わい、サバ食文化を語り、サバを通じて人々と交流を図るサバフリーク集団である。ゆえに、サバ缶の品薄を訴えられても対応はできない。小林会長も本業はデザイナーだ。
サバ好きが高じて、4年前から全国のサバの産地が一気にそろう「鯖サミット」を企画すると、毎回想定を超える人々が集まり、昨年の千葉県銚子開催では1日の入場者数は3万人にもなった(2018年は長崎県松浦市で10月27、28日開催予定)。
ここへきてメディアからの注目度が増しているが、このようにサバは数年前からじわじわと来ていたのだ。
10年前からサバの好調な水揚げが続く
なぜ、大衆魚の代表格であるサバがこれほどまでのブームになっているのか。何よりそのおいしさに加え、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれるなど体によいことがその背景にあるだろう。だがここでは、ちょっと違った角度からサバブームを眺めてみよう。
ブームの大前提にあるのが、多くの魚が不漁になるなか、ここ10年、日本国内でサバの安定した漁獲が続いていることだ。
サバは主にまき網漁で漁獲されるが、1970年代には100万トンを超える漁獲があったサバはだんだん数を減らし、90年代に入ると20万~30万トン台しか獲れない不漁年が度々おとずれるようになっていた。
ところが、10年ほど前から多少の波はあるものの増加傾向にあり、15年、16年は50万トン台超えと比較的好調な水揚げを記録している。